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『桜舞い散るその中で』

...2009/03/02 00:28...



「はぁ~。」

窓の外にはほころび始めた桜のつぼみ。
夜の外灯に照らし出されたその可愛いふくらみを、何気に眺めながらひとつため息をつく。











なぜだかわからないのだけれど、ここ最近の私は自分の気持ちを持て余していた。
心にポッカリと穴が開いたようで、心の中に霧がかかったようで、
なんだかスッキリしない気分。


何をするにも集中できない。
何をするにもヤル気が起きない。
まるで夢の中を彷徨ってるような気分だ。



「はぁ~。」


何度も出てくるため息には、自分自身が一番うんざりしていたのだが、
幾度も心に覆いかぶさってくる霧に対抗するには、これが一番効果的だった。
ほんの少しの間でも、心の中に引っかかった何かが、
ため息と一緒に体の外に出ていってくれるような気がするから。


「おい、ここに置いておくぞ。」


孝天がテーブルにマグカップを置きながら、
もう片方の手に持った自分のカップに口をつける。
彼の手を離れたカップからは、暖かそうな湯気が上がっていた。


「うん・・・・・・ありがと。」


私はそのほんわりと浮かんだ湯気を一目見ただけで、
うつろな視線を、また公園にある薄紅色のふくらみに向ける。


こんな気持ちになったのには、自分自身思い当たる節があった。



私はほんの1週間前に、仕事でひとつのプロジェクトを仕上げていた。
規模にしたらそんなに大きくないイベントのプロデュースだったのだけれども、
私が再就職して初めて一人で任された仕事だったのだ。


私が前の会社を辞め、今のこの会社に再就職したのは、
ここのプロデュースした友達の結婚式の心のこもった暖かい雰囲気に惹かれて、
自分もこんな風に人の心を動かしたいと思ったからだ。


入社してから下積みの間は雑用ばかりだったし、毎日続く雑務に、
このままで終わってしまうんじゃないかと不安になったこともあった。

でもいつか、あんな心温まるイベントを、
自分自身の手でプロデュースしたいと思って、ここまで頑張ってきたのだ。


それが去年の暮れに出した私の提案書を、
ずっと私を見守ってきてくれた上司が取り上げてくれて、
「面白い! お前一人でやってみろ!!」
と言って任せてくれた。


緊張と不安が交差する中、やっと夢が叶うかもしれないと思うと、
俄然ヤル気が出てきた。


それからは連日連夜、遅くまで残っての作業に追われたが、
私の心は嬉しさに躍っていた。
睡眠不足になっても、ろくに食事の時間が取れなくても、
体の疲れを感じないくらい楽しかったのだ。


そしてそのイベントがほんの1週間前、やっと終わりを迎えた。


それは思っていたよりも大盛況で、
予想していた来訪者の倍以上の人たちが足を運んでくれ、
口々に「心が温まるようなイベントだったよ。ありがとう。」と言ってもらえた。
私は生まれて初めて味わう達成感に、涙が止まらなかった。





次の日からだ、こんな気持ちになったのは・・・・・。


何かをやり遂げた達成感は充分にあった。
でもそれ以上に、自分の全てを出し切った感覚があって、
もう私の中には何も残っていないような喪失感が大きくのしかかっていたのだ。
もう私にはあれ以上のモノを作り上げることができないんじゃないかという
不安も込み上げてくる。


ずっとやりたくてやりたくて仕方がなかった事をやり遂げ、
ずっと欲しくて欲しくて仕方がなかった気持ちを手に入れた。


それはきっと誰もが経験できることではないし、
それを経験できた私はたぶん幸せ者なのだろう。


でも、私の心にポッカリと開いた穴は、
間違いなく私を以前の私に戻す事を阻んでいた。


力の抜けきった私は、ただただ自分ではどうにもコントロールできない感情に
飲み込まれていくしかなかった





おい、ちょっと来い!!」


キッチンからの孝天の声にも、スグには反応できないでいる私が
返事もせずにボォっと窓の外を眺めていると、再び彼の声が私を呼ぶ。



「早く来い!!」


私は「はぁい」と小さく返事をすると、力なく声のする方へ歩いていった。

キッチンに入ると、孝天が私に向かって
ニンジンとピーラーを「ホラ!!」という風に手渡す。

その意味が分からず、私がそのニンジンとピーラーを持ってホォーとしていると、
自分もニンジンを片手に、アゴを突き出しながら彼が言う。


「ボサっとしてないで、早く皮を剥け。」


手早く無駄のない動きで皮を剥く孝天。
その姿を眺めながら、珍しいこともあるものだと驚く私。


そう、ここでは彼が料理を作り、
私は食べた後の片付けの時にしかキッチンに入れてもらえないのだ。
どうやら彼は私が包丁を持ったり、フライパンを振っていると気が気じゃないらしい。
まぁ、彼の方が料理の腕も上なのは周知の事実だし、
よく食材を落としたり、火傷をしたりして、
邪魔をしてるとしか言えない状況なのだから仕方がない。


気乗りしないまま、言われたとおりに皮を剥き始めた私。
彼はとっくに剥き終わって、それを手際よく切り始めていた。


「はい、剥けたよ。」


そう言って孝天にニンジンを差し出すと、それを黙って受け取る彼。
そしてそのニンジンも切り終わると、今度はそれと包丁を私に手渡す。

「え?? 何?? 切り終わったんじゃないの?」

そう言う私に答えないまま、孝天は自分も手に取ったニンジンに何かをしだした。
彼の手の中で変わっていくニンジンを見つめる私。


「ホラ。」


見るとそれは見事に、可愛い桜の形になっていた。


「可愛い・・・・・♪」


手渡されたニンジンの桜を、マジマジと眺める私。
知らず知らずのうちに、微笑がこぼれていた。


「おい、見とれてないで、お前もやるんだよ。」
「・・・・・・え?? 私も??」

ニンジンから目を上げ、今度は孝天の顔を驚きの顔で見つめた。


「ああ。 教えてやるからやってみろ。」
「む・・・・・無理だよ。」
「いいからやってみろ。」


孝天は私の近くに寄ってきて、目の前でニンジンの桜を作り始めた。


「ココはこうやって包丁を動かす。 親指はここにつけてなきゃ怪我するぞ。」


またひとつ、彼の手によって可愛い桜が誕生した。
彼の手が織り成す魔法のようだ。
それを見ていると、私もやってみようという気になってきた。

「よぉ~し!!」

包丁を握りなおし、ニンジンに刃を当てる。

「イタっ・・・・!」

思ったよりもスっと刃が入ったので、手が滑り指を少し切ってしまった。

私が血で滲んだ自分の指先を眺めていると、
孝天がその手をかすめ取り、自分の口元にもっていった。
指先に彼の暖かい唇の感触を感じて、思わずドキっとする。

「お前はホントに不器用だな。 ちょっと待ってろ。」

自分の口から私の指を離しキッチンを出て行った彼は、
スグに絆創膏を片手に戻ってきた。
手際よく手当てをすると、また桜の花作りに戻る。

私も見よう見真似で、必死に包丁を動かす。
二人っきりのキッチンには、彼がリビングでかけたCDの音だけが流れていた。

「できたっ!!」

私の手の中には、形のデコボコな桜が生まれていた。

孝天が苦笑いでそれを眺める。

「ああ、できたな。 次!」

私は新たにニンジンを取って、また桜を作り始める。
少しづつ慣れてきて、口をきく余裕の出てきた私は彼に話しかけた。

「ねぇ、このお花、どうすんの??」
「ん?? ちらし寿司の上に飾る。」
「ちらし寿司?? わぁ~い!! 私、孝天の作るちらし寿司、大好き!!」
「口は動かさなくていいから、手を動かせ。」
「ねぇ、なんのお祝いでもないのに、なんでお寿司??」
「・・・・・・・・・。
「ねぇ。・・・・・ねぇったら!!」
「・・・・・・ったく、うるせぇなぁ。 花見に行くんだよ。」
「お花見?? いつ??」
「これができたら。」
「ええっ?! これから??」
「ああ、だから黙ってやれ。」

孝天の前にはたくさんの可愛い桜。
私はまた慌てて、手を動かし始めた。

必死になってやっていると、最初の頃とは比べ物にならないくらいの出来で
桜ができていった。


「なぁ。」


孝天がふと、私を呼ぶ。
私は顔も上げずに手を動かしながら返事をする。

「ん?? なぁに??」
「次はいつだ??」
「何が??」
「仕事。」


私はハっとして孝天の顔を見上げる。
孝天は静かに私を見つめていた。


「仕事・・・・・??」
「いつまで止まってる気かと聞いてる。」
「え・・・・??」

いつもの事ながら、彼の真っ直ぐな視線に
自分の心を見透かされてるようで、心臓が激しく打ち始める。


「いつまでって・・・・・・。」
「止まっちゃいけないと言ってるんじゃない。
 ただ、いつまで止まっていて、いつからまた始めるのかを自分で決めろと言ってるんだ。」

そういうと、彼はコンロの上で沸きあがっているお湯に、
たくさんの桜型のニンジンを入れた。



そうだ。  私はこのまま止まってしまうところだった。
私は手の中でニンジンが桜に生まれ変わるように、
何かを作って人に喜んでもらえたり、楽しんでもらいたかったのだ。
ほんの少しのアイデアで、今まで生かされていなかったいろんな物に命を吹き込み、
それを誰かが喜ぶ・・・・・・・そんな仕事がしたかったのだ。
ここ数日の私は、それを忘れてしまっていた。
孝天はそんな私に気付いていた。
そして思い出させてくれた・・・・・・・。


ほぉ~っとそんな事を考えていると、
アッという間に、お重箱に詰められたちらし寿司の上に
可愛い桜たちが並んでいた。






「夜の桜もなかなかキレイね~。
 まだつぼみも半分くらい残ってるけど、あとどれくらいで咲ききっちゃうのかな??」
「さぁな。 咲きたくなったら咲くさ。」


近くの公園にシートを敷き、私の膝の上に頭をのせた孝天が呟く。
彼の髪に手をやり、上を見上げると、桜の枝の間からお月さま。

時々ハラハラと舞ってくる桜の花びらが、彼の髪に止まる。


「ねぇ、ほら見て♪ お月さまがとってもキレイだよ?」


目を閉じた彼からは返事が返ってこない。
でも、シートについていた私の手に、そっと孝天の手のぬくもり。
そして自分の胸の上に乗せて、ギュっと握りなおした。


少し冷たい春の夜の風。

私は彼の手のぬくもりを感じながら、
明日からの自分を考えていた。


「春も訪れたことだし、明日からまた頑張ろうかな。」


そう呟いて月に照らされた彼の寝顔を見つめると、
寝ているはずの彼の口元がゆるんだ気がした。


「孝天、大好き♪」


そう言った私も月に照らされ、桜に見守られていた。


                                 ~~END~~



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