ここはF4のことが大好きな私たちの頭の中で、日々繰り広げられているF4ワールドを公開している ブログです。 よろしければ一緒にスーワールドへ、迷い込みませんか?

『彼の上に降る光』

...2009/03/02 00:41...


トントン トントン トントン トントン・・・・・。



朝から孝天はキッチンに篭ったまま出て来ない。
私が何度覗きに行っても目もくれず、ひたすら器用に包丁を動かす彼。









「そんなに夢中になって、何作ってるの?」



そう私が訊ねても、素っ気ない声で



「なんでもない。」



と答えるだけだ。



おかしい。 何かおかしい。



何がおかしいのかと問われても、明確にこうだからおかしいとは言えない。
でもなんだかおかしいのだ。
いつもの孝天じゃない。



いったいどうしたというのだろう。
もうほぼ一日、彼はキッチンに立ち続けている。
私の胸の中には、いつもより大きな不安の輪が広がっていた。



一心不乱にタマネギを刻む孝天。
時々肩で目を拭う仕草。
私にはそれが、ただ単にタマネギが目に沁みたからという風には見えなかった。



私は彼のすぐ後ろでコーヒーを入れる。
なぜだかわからなかったけれど、それを今すぐやめさせなければと思ったのだ。
なぜだろう??





「孝天、コーヒーが入ったよ。 少し休憩しない??」



そう声をかけてみたが、孝天の反応はない。
彼の背中が心に痛かった。



「孝天。 ねぇ、孝天。」



彼の腕に手をかけた私は、驚きのあまり固まる。



「・・・・・孝天っ!! 血が・・・。
 手、怪我してるよ!!」



孝天は叫びにも近い私の声にやっと反応を示す。
包丁を持った手を止め、真っ赤になった手を眺めていた。



しばし無表情で流れる血を見た後、
私の視線にふと我に返り、手を蛇口から流れる水に浸す。



「大丈夫だ。」



そう言った彼はまた包丁を動かし始めた。



やっぱりおかしい!!
今日の孝天はなんか変だ!!



「もうやめて!!」



まだ血も完全に止まらないのに、
ひたすら動かし続ける彼の手を掴んで制する私。



その時、気付いた。
孝天の手が小刻みに震えていることに・・・・・。



私は夢中で彼の手をとり、リビングまで引っ張って行くとソファに座らせる。



「大丈夫だって言ってるだろ。」



孝天は眉間にシワをよせ、バタバタと動き回る私を見ていた。
私は救急箱を持ってくると手当てを始める。
その間、二人の間に会話はなかった。




包帯を巻き終わり、そっと彼の顔を見る。
少し蒼ざめて見える孝天の顔。
いつも見せる悲しい顔とはまた違う、なんとも言えない表情だった。



どうしたの? 何があったの?



私がそう訊ねても、きっと彼は答えないだろう。
だって孝天はそんな人だから・・・・・。



悲しみも苦しさも辛さも、
全て自分の中に抱え込み、自分一人で背負ってしまう人だから・・・・・。



私はこの人に何もしてあげられないのだろうか??
何もせず、見えないフリをした方がこの人にとっては救われることなのか??



でも、今まで見たこともないようなその顔を見ているとたまらなくなり、
彼の頭を抱え込む。
彼の持つ悲しみを一緒に抱え込みたくて・・・・・。



「何するんだっ!!」



そう言って私から離れようともがく孝天を、私は放すことができなかった。







「孝天、辛い時には辛いって言っていいのよ?
 悲しい時には泣いてもいいの。
 お願いだから、自分一人で抱え込むのはやめて・・・・。
 理由なんて聞かない。
 でも忘れないでほしいの。
 あなたの傍にはいつも私がいることを・・・・・。」






やがて静かになった孝天は、私の腕の中で小さく震え始める。
まるで小さな子供のように・・・・・。







その夜、私たちは抱き合って眠った。
彼が私の腕の中で静かに寝息をたてる。
私は壊れやすい宝物を抱いているような気分だった。




彼の真っすぐな黒い髪に頬を寄せ、ゆっくりと撫でながら祈る。




明日の朝目覚めた時、
どうか彼の心にある大きな重りが、少しだけでも軽くなっていますように・・・・・。
どうか彼の心を明るく照らすお陽さまが、彼の上に降り注ぎますように・・・・・・。




二人の周りには、朝が来る前の静けさが広がっていた。
                                 


 
~~ END ~~






スポンサーサイト









この記事に対するコメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する







CALENDER
09 ⇔ 2019/10 ⇔ 11
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
プロフィール

Y&Y

Author:Y&Y
FC2ブログへようこそ!

カテゴリー
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
FC2カウンター
フリーエリア
現在の閲覧者数: