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『 記憶の欠片 』 ~後編~

...2009/03/02 23:41...

カードキーを差込みドアを開け、部屋の奥にあるベッドのところまで辿り着くと、
投げるように手を放され、私はベッドの上に勢いよく転がった。
孝天はそんな私に目もくれず、更に奥まで進み、
窓にかかるカーテンを力任せに引き開ける。



窓の外に広がるキレイな夜景も、今の二人の瞳には映らない。



心に突き刺さる彼の背中。
痛い沈黙。
二人を包む冷たい空気。



私はアルコールが体を支配していなかったら、
今すぐこの場から走って逃げ出したい気持ちで一杯だった。








しばらくの間、無言で窓の外を睨みつけていた孝天の口がようやく開く。



「・・・一体、なんの真似だ?」



押し殺したように低く静かに響く声。
渇いた部屋に木霊した。



「なんの話?」



彼も怒っているのかもしれないが、
私も体が震えるほどの怒りを感じているのだ。



「今日の失態はなんだと訊いてるんだ。」



いつもの私とは明らかに違う反抗的な答え方に、孝天は振り返って言った。
まだかろうじて理性で怒りを押し込めている。



「・・・失態? 
あなたがグラスを床に叩きつけたっていうこと以外の失態は知らないけど?」



そう言って私が睨み付けた視線のその先に、キリキリと唇を噛みしめ、
怒りを堪える孝天の顔があった。



「・・・じゃ、質問を変える。
 一緒にいたあの男は誰だ?」

「ヴァネスのこと? ・・・・・知ってどうするの?」

「誰だと訊いてるんだっ!!」



いきなり声を荒げた孝天のその瞳には、
さっきまでの理性で支えられていた視線はなかった。
ただただ怒りを燃やすその瞳。 怖いほどだ。



「どうしてあなたにそんな事、教えなくちゃいけないの?!」



怒りに燃える孝天に恐怖を感じてはいたが、
アルコールも回りいつもの精神状態ではなかったことと、意地もあり、
またもや反抗的な言葉を投げつけた私。
でも、それも言い終わるか終わらないかという時、後悔の念に変わった。



孝天がそんな私の態度に理性の糸がプツンと切れ、
いきなり私をベッドに押し倒したからだ。



「誰だっ!!」

「い・・・痛い!! 孝天・・・放して!!」



私は彼の大きな手で押さえつけられた腕を解放しようと懸命にもがく。
でもそれは虚しい抵抗だった。



彼の手がドレスにかかり、荒々しく引き剥がす。
そして私の首筋に喰らいつく。
こんな孝天は初めてだ。
いつもは私を優しく包み込む存在である孝天が、今は私に怒りの炎を向けている。
容赦ないその変貌ぶりに、私は震えるほどの恐怖を感じていた。



「やめて!! お願いだから! 放して・・・。」

「俺が別れを告げて日本にいない間、
 お前はヤツにこんなことをされていたのか?!」

「痛い! 孝天!」

「お前はアイツの腕の中で、俺にしか見せたことのない顔をして見せたのか!!」



・・・・この瞳、以前にも見たことがある・・・・。



そう・・・私がバイト先の男の子に抱き締められているのを目撃した孝天が、
ほんの一瞬見せた、怒りに燃える瞳。







嫉妬だ・・・・・。







「どうなんだ?! アイツの腕の中で泣いて見せたのかっ?!」

「孝天・・・・お願い・・・。」



彼の顔が涙で歪んで見える。
怖いはずのいつもとは違う孝天が、いつの間にかとても愛おしく感じられた。
怒りに燃えたその顔が、今にも泣き出しそうに悲しく見えたのは私の気のせい?



ふとした瞬間に彼の手から解き放たれた両手で、
ありったけの想いを込めて彼の両頬を包む。



「そんなに悲しい顔をしないで・・・・・。
 その答えを一番よく知っているのは、孝天・・・あなたでしょう?」



私がそう言ったとたん、一瞬にして孝天の表情が変わった。
彼の瞳がみるみるうちに涙で膨らむ。
そしてその涙が私の上に零れ落ちる前に、私を強く抱きしめた。



「私にはあなたしかいない。
 どんなに遠く離れてたって、あなたしかいなかった。 そうでしょ?」
 


私が彼の柔らかな黒髪に唇を寄せてそう囁くと、
彼の中の何かがプツンと切れたように、私の体を激しく求め始めた。



渇いた部屋の中、ふたつの湿った体が絡み合う。
どこまでも宙高く飛ばされたかと思うと、いきなり腕を捉まれ二人堕ちていく。
繰り返されるそのアップダウンに、私は幾度も彼に限界を訴えた。



「・・・孝天・・・もう・・・・。」



片時も私を腕から離さない彼が、呻くように呟く。



「ダメだ・・・まだ・・・まだ離さない・・・離したくない!」



まるで何度抱き合ってもひとつになれないふたつの体を、
繋ぎとめるようとするかのように・・・。










ようやく解放された私は、疲れ果て横たわる彼をベッドに一人残しシャワーを浴びる。
体の至るところ、バラ色に残る彼の名残り。
彼が私を愛した印だった。
そっと指でなぞると、そのひとつひとつが私に向かって叫んでいるようで、
余計に愛おしい気持ちが込み上げてくる。



でも私の心の中で、ひとつの大きな不安が押し寄せる。



もうすぐ、また私の傍から離れて行ってしまう・・・・・。



その事を考えると、足元から地面が崩れ落ちていくような錯覚に陥る。
打ちつけるシャワーの下、私は濡れた体を自分の腕で抱き締めた。










バスローブを羽織り、ベッドにいるはずの孝天の元へ戻ると、
彼は窓際に立って街の灯りを見下ろしていた。
しばらくはそんな彼の後ろ姿を眺めていたが、
その背中があまりにも寂しげで、そっと近寄り抱き締める。



腰に廻した私の手を優しく握る孝天。



今の二人に言葉は要らない。
私はただ祈る。 このまま沈黙が続いて欲しいと・・・・。
そうすれば彼に、また遠く離れ去ってしまうことを告げられずにすむ。
どうかこのまま、沈黙が二人を繋いでいてくれますように・・・・。



でも、その沈黙を先に破ったのは私だった。



「ねぇ、次はいつ発つの・・・?」



どうして私の方から言ってしまったんだろう?



彼から切り出されるのが怖かったのか・・・・。
いや・・・彼の背中が迷って苦しんでいたからだ。



孝天がびっくりしたように振り返り、私を見つめる。



「お前・・・だから・・・??」


私の瞳の奥を覗き込むような孝天。



「どうして私には何も言ってくれないの・・・?」



私はできる限り声が震えないように、問いかける。
すると孝天は私から視線をはずし、ベッドに移動し腰掛けた。
それからまた長い沈黙・・・。



「・・・・・怖いんだ。」

「え?」



彼は座ったままうつむき、自分の足を見下ろしている。



「・・・・怖くてたまらない・・・。
 あの流れ弾に当たった時、もうこれで自分の人生が終わるのかと思った。
 お前にもう二度と会えないんだと思った。
 それを思い出すと怖い・・・お前に会えなくなるのが・・・怖い。
 それが俺を迷わせてた・・・・・。」



“だったら行かないで!! ずっと私の傍にいて!!”



喉の奥までそんな叫びが込み上げてきた。
でも、私は言わない・・・・言えない。



そんな想いを飲み込んだことは一度や二度じゃない。
今までに何度も何度も口をついて出そうになるたび、
グッと体の中心へと押し込んできたのだ。



彼が彼であるために・・・・。



私は彼の前に立ち、彼を胸元に抱き締めた。
親が子供を抱き締めるように・・・。



「大丈夫。 あなたは必ず私の元へ帰ってくる。
 大丈夫・・・大丈夫よ・・・。」



自分に言い聞かせるようにそう囁く。
孝天がそんな私の腰に腕を廻し、痛いほど抱き締めた。











ベッドの上、後ろから孝天に抱き締められながら、窓からの夜景を眺める。
私の髪をそっと片側に寄せて、バスローブに手をかけ下ろす孝天。
露わになった私の肩先にそっと唇を寄せ、首元に顔を埋める。



「お前の匂いがする・・・。」

「どうしたの?」

「落ち着くんだ・・・。」



少しかすれた彼の声。
泣きたくなるほど切ない声だった。



「この痕・・・消えなきゃいいのにな。」



フッと笑った孝天。



「これじゃ、しばらく襟の開いた服は着れないわw」

「これが残ってる間は、俺のこと忘れられないだろ。」

「・・・・・・・。」



こんなことしなくたって、孝天はいつでも私の心のど真ん中に住みついてる。
忘れたくたって忘れることなんてできないのに・・・。
私の中の孝天に関する記憶は、もうすでに細胞の奥の奥まで刻み込まれていた。



「忘れる・・・か。」



首筋にかかる孝天の吐息が、
彼と離れて暮らした絶望の日々を思い出させ、より私を感傷的にさせる。



「記憶って残酷よね。
 薄れて思い出せなくなっていっても寂しくて泣きたくなるし、
 ハッキリ鮮明に残っていても、
それを思い出すたび恋しくなって涙が出てきくる・・・。」



私がそう呟くと、それきり黙りこくってしまった孝天。



「・・・・・待ってなくていい。」

「えっ・・・?」



再び私の肩に顎を置きなおし、フゥ~と長い溜め息をつきながら彼は続ける。



「お前の中の俺の記憶が薄れて思い出せなくなったら、
 俺のことはすっかり忘れてしまえ。 待たなくていいから・・・。」








これが孝天だ・・・・。








無理やり腕に抱きすくめたかと思ったら、今度は突き放しにかかる。



私は初め、それが彼なりの優しさなんだと思っていた。
大切な人を自分の傍に置いておくと、その人が苦しむ。
難しい自分と一緒にいれば、その人を傷つけてしまう。
そんな思いから、自分に縛り付けることを避けているのだと思っていた。



だけど違った。
怖いのだ。



本当の彼はすごく寂しがりや。
そして心の一番奥底には、さっき私に見せたような激しく燃えるような独占欲もある。
けれどそれを見せて、拒絶されるのが怖いのだ。



求めて手に入れて、そして最後に一人取り残される。



それが怖い。
だから最初から手に入れようとしない。



彼は決して自分を裏切らないものに関しては、異常なほど関心を示す。
カメラ・・・写真・・・動物・・・信仰・・・・・。



「無関心」という鎧に身を固め、自分を守る小さな子供・・・・。



その証拠に、「待つな」と言いながら、
痛いくらいに抱き締める彼の腕が微かに震えていた。



「そうね・・・じゃ、そうする。」



私がそう言ったとたん、その腕がピクリと反応する。



「ああ・・。」



彼の低い摩擦のある声が、私には溜め息のようにも聞こえた。



「でも・・・。」

「・・・ん?」



私の前で組まれた腕をほどき、振り返って孝天を見つめる。



「記憶がすっかり消えてなくなってしまうまでは、
 あなたのこと・・・想って待っていてもいい??」



予想外の答えが返ってきて、驚く彼。
そんな彼の髪を撫で、瞳を見つめ、そしてゆっくりと口づける。
孝天はそんな私を無言で受け入れた。
頬にうっすらと笑みを浮かべながら・・・・・。










決して、私の中の彼に関する記憶が消え失せてしまうことはない。



たとえショックでそれがぼやけてしまっても、
たとえ体のあちこちに残されたバラ色の刻印が消えてしまっても、
私の心と体には、彼の記憶の欠片が突き刺さっているから・・・。





都会の灯りが静かに差し込むホテルの部屋。
その夜、二人の影はひとつになったまま、ふたつに分かれることはなかった・・・・・。





                                           ~ END ~



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