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『 聖夜の月 』

...2009/03/02 23:48...

チュン、チュン、チュン・・・・・。



遠くで鳥の鳴き声が聞こえる。
瞑ったまぶたの上に降り注がれる陽の光が眩しくて、
少しずつ夢の世界から現実に引き戻される私。



ん・・・、眩しい・・・・。



固く瞑りなおした目を、小さなまばたきをしながら開けてみると、
目の前には見慣れた穏やかな寝顔。
少し伸びた顎ひげを下から見上げていた。



孝天・・・眠ってる時は可愛い♪



いつも眉間にシワを寄せてしかめっ面を決め込んでる彼からは想像もつかないほど、
幼さの残るあどけない寝顔。
鳥のさえずりの合間に聞こえてくる静かな寝息が、私を穏やかな気持ちにさせた。









う~~~ん・・・・!!



私の上に乗せられた彼の腕が重くて、それを除けるように背伸びをしてみる。
すると彼も目を覚ましたみたいだ。



「ん? ・・・なんだ、もう起きてたのか。 早いなw」



そう言って、私の顎をコチョコチョと撫で上げる彼。
そしてまだ眠そうな顔つきで自分の体を起こすなり、ひょいっと私を抱き上げた。



えっ・・・・・??



脇の下に手を入れて抱き上げられた私の目線と彼の目線とが、平行に合わさる。
それと同時に私の視界に毛むくじゃらの腕が二本、
彼に向かってニョッキリ伸びているのが入ってきた。



えっ・・・・・? 
え~~~~っ?!
コレって一体どういうことっっ?!



ギャーっ!!



寝起きの頭はもうパニックを起こし、咄嗟に彼の腕を引っかいてベッドを飛び降りた。
そして少し開いていたドアをすり抜けリビングまで行った時・・・・・。



壁際に立てかけてある大きな姿見の前で固まる私。
その鏡の中には体中の毛を逆立て、驚いたような顔つきで私を見つめる一匹の猫がいた。



なんで・・・・・なんで私、猫になっちゃってるのぉぉおお~~~っっ??



今、現実に起きていることが理解できずに、
夢ではないだろうかと、自分の目を擦ってみる。
すると鏡の中の猫も毛むくじゃらの手で目を擦っていた。



うっそぉ・・・・・。



「お前、ひどいヤツだな。 命の恩人の手を引っかくとは・・・。
 俺があの時気付かなかったら、お前はとっくにあの世行きだぞ。
 昨日は雪が降るくらい寒かったんだからな。」



そう言って私が引っかいた手をさすりながら、ゆっくりとキッチンへ入っていく。



昨日・・・昨日??
昨日って・・・・何かあったっけ?



自分の身の上に何が起こっているのかもわからず、
鏡の前で混乱しまくった頭をフル回転させ、彼の言う昨日のことを思い出そうとしてると、
キッチンから出てきた彼は、私の前にポンっと水の入ったお皿を置いた。
そして自分はもう片手に持ったマグカップに口をつけながらソファに腰を下ろす。



「喉が渇いただろ? 飲めよw」



私を見つめ、ニッコリと微笑む孝天。



なに? このお皿に入った水を私に飲めって言うの?
私は猫じゃないってばっっ!! 孝天~~っ!!



気付いて欲しくて声をあげても、
喉の奥から響いてくるのはニャ~という鳴き声だけ。



「どうした? 飲んでいいんだぞ?
 そうか・・・わかったわかった。 もう近づかないからw
 そんな顔して睨むなよ。」



そう言いながら彼は、笑いを押し殺して私を見つめる。



違うって言ってるのに・・・・。
どうして気がついてくれないの・・・??



振り絞っても出ない涙の代わりに、私はか細い声で鳴き続けた。



「なんで飲まない?
 う~ん・・・・・牛乳なら飲むか?」



そう言って彼は私の目の前のお皿を再びキッチンに持ち去る。
そして冷蔵庫を開けて覗き込みながら呟いた。



「しまった・・・切らしてたな。」



彼は慌てて寝室に戻り、しばらくして着替えてから出てきた。



「ちょっと待ってろ。 すぐ買ってきてやるからな。」



ドアの向こうに消えて行く彼を追いかけたが、
そんな私の目の前でドアがバタンと閉まる。



あ~あ・・・行っちゃった・・・。



仕方なくリビングに戻った私はソファの上に飛び乗り、
そこに座って混乱しきった頭を整理するように、できる限りのことを思い出そうとした。



なんでこんなことになっちゃってんだろう?
孝天は昨日って言ってたけど・・・・・何かあったんだっけかな~?
確か昨日は久しぶりに彼と街に出掛けて・・・・帰ってきて・・・・。
ん~と、ん~と・・・・・そうだっっ!!
珍しくケンカしたような気がする・・・・うん。
そうだわ、確かにケンカした。 私、なんかわめいてたんだよね・・・。
アレっ? なんでケンカしたんだっけ・・・??
えっと・・・・・ご飯?? いや、違うな。
TVのチャンネル?? いや・・・それも違う・・・・・。
えぇ~~っ?! なんでケンカしたんだっけ?? 思い出せないぃ~~っ!!



考えれば考えるほど頭の中がこんがらがって、
部屋中を飛び回りたくなる衝動に襲われる。



どうしよう・・・? 私、猫になっちゃった・・・。



泣き出しそうな思いを抱えたままソファの上でうずくまってると、
ドアの向こうから大きな足音が聞こえ、勢いよく開いた。



「ただいま。」



孝天~~!



私は彼の声を聞くなり、ソファから飛び降り彼の足元に擦り寄る。



「どうした? 心細かったのか?」



コンビニの袋をガサガサと揺らしながら豪快に笑う孝天。
そして私を小脇に抱えるとキッチンまで行き、
さっきのお皿に買ってきたばかりの牛乳を流し込む。



「ほら、これなら飲めるだろ、姫?」



私はそう言って微笑む彼の顔を見上げていたが、
ちょっと喉が渇いた気がして足元に置かれたお皿に視線を落とす。
でも、どうやって飲めばいいんだろう・・・?



しばらくの間、そうやって眺めていると、
孝天はわかったと言わんばかりに、自分の指を牛乳を浸した。
そしてその指を私の口元まで持ってきて揺らす。
鼻先にほのかな甘さを湛えたミルクの匂いがした。
彼の顔を小さな声で鳴きながら見上げると、
ほら・・とでも言いたげに優しく私を見つめる瞳にぶつかる。
私は思い切って彼の指を舌先で舐めてみた。



美味しい・・・♪



私は喉が渇ききっていたのと、お腹がすいたのとで、
一気にお皿の中の牛乳を飲んでしまった。
そんな私の頭を撫でながら孝天が囁く。



「ゆっくり飲めよ、やんちゃ姫・・・。」











満たされたお腹を抱えて抱かれる孝天の膝の上。
窓から入る暖かく柔らかな日差しの中、私はうつらうつらとまどろむ。
彼のスラリと長い指が私の頭や耳の後ろをくすぐると、天にも登りそうなほどの心地よさ。
私は夢の世界に入る間際のほんの一瞬、
こんな生活も悪くはないんじゃないかと思った。



孝天、もっと触れて・・・もっと愛して・・・。










私が猫になってから数週間が経った。
初めのうちは戸惑いもあったが、徐々に猫として暮らす生活に慣れていく。
自分でもこんなに順応性があったのかと驚くほどだったが、
生活自体は以前から一緒に暮らしていたので何も変わらない。
変わったことといえば、会社に行かなくてよくなったことと、
孝天が私に触れたり話しかけたりする頻度が増えたことくらいだろうか。
孝天は実によく私の面倒を見てくれた。
かゆいところに手が届くとはこんなことをいうのだろう。
なので私は猫になったとはいえ、なんの不自由も感じずに毎日を過ごすことができた。



彼は撮影と買い物に出掛ける以外、ほとんど外出はしない。
朝起きてから夜眠るまで、二人はほとんどの時間を共に過ごした。
彼は私を「姫」と呼び、私はそう呼ばれるとすぐさま彼の膝の上に飛んでいった。
そしてその膝の上でまどろむ。 何時間も・・・・・。
それはホントに夢のような生活で、
私は彼と四六時中一緒に過ごせることの幸福を体いっぱいに感じて過ごした。
夜はベッドの上、彼の腕の中で眠る。 至福の時だ。
そんな私はいつしか自分が人間だったことも忘れてしまいそうになっていった。



ただひとつ気になること。
それは人間としての私の存在。



どうやら彼の中に、私という人間はもとから存在しないらしい。
部屋の中にも私の名残はないし、彼の口から私の話が出ることもなかった。



孝天は私がいなくなっても、ちっとも以前と変わらない。
彼にとって私という存在はそんなに必要なものではなかったのだろうか・・・?



私を呼ぶ柔らかな彼の声を聞くたび、彼が私をその逞しい腕に抱くたびに、
人間だった頃、彼が私を呼んでいた声や私を抱きしめた腕を思い出し、切なくなった。



でも今更そんなことを思って悲しんでいても仕方ない。
私はもう人間には戻れないんだから・・・・・。










そんなある日、孝天は買い物に出掛けた。
私はいつもどおりソファの特等席に身を置き、彼の帰りを待つ。
すると冬の短い日もすっかり落ちた頃、大きな荷物を抱えて帰ってきた。
何事かと思って見ていると、リビングにその荷物をドサっと置いた彼が私に向かって言う。



「姫、この間言ってたこと、なんだか思い出せそうな気がするんだ。」



この間? 思い出す・・・??



そう言えば数日前、ベランダの窓辺に立ち、夕陽を眺めていた彼。
沈黙のまま佇むその寂しげな表情が気になって、私は彼の足元に擦り寄った。
するとそんな私を抱き上げて、こう言ったのだ。



「なぁ姫・・・俺、何か忘れてることがあるような気がするんだ。
 なんだったかな・・・? 
すごく大切なことだったような気がするんだが・・・。
 お前、知ってるか?」



そしてまた沈みゆく夕陽に視線を戻した孝天。
彼はその後も、電気もつけないその部屋で、
辺りが真っ暗な闇に包まれるまで立ちすくんでいた。



あのことかな・・・?



目を丸くして見ている私の前で、孝天は大きな荷物の荷解きをしていく。
そして何かにとり憑かれたようにそれを組み立てる。
出来上がったものを起こしてみると、
それは彼の背丈ほどもある大きく真っ白なクリスマスツリーだった。



うわ~。



そんなに広くもないリビングの中では、
邪魔に思えるほどの大きなものだったが、
孝天は何も飾りつけられていないそのツリーを、ただ黙って見つめている。



孝天、何を思い出そうとしているの?



私は彼の足元に転がるオーナメントに近づき、ツンと鼻でつついてみた。



「・・・珍しいか? これはこうやって飾り付けていくんだ。」



不思議そうな顔で自分を見上げる私に気付き、
孝天は優しく微笑みながらオーナメントを手にとってツリーに飾り始める。
ひとつひとつ丁寧に、間隔をとりながら枝に掛けていく彼。
その顔は、嘘にも楽しそうだとは言えない表情をしていた。
それでもただ黙々と作業を続ける孝天。
私もそんな彼を傍で見つめていた。



しばらくの間、沈黙の時間を過ごしていた二人。
けれど、そんな彼の手がある時、ふと止まった。
自分の手の中にあるオーナメントを、ジッと食い入るように見ていた孝天。
そして次の瞬間、何かに弾かれたようにベランダに飛び出した。



なにっ?! どうしたの??



そんな彼の行動に驚いた私はその後に続く。
ベランダの柵をすがりつくように掴んだ彼は、真っ暗に広がる空を眺めていた。



孝天! 孝天!!



彼の足元に擦り寄った私は声の限りに鳴いてみたが、
それでも彼の視線は私に向かない。
そしてしばらく空を仰ぎ見ていたその瞳が部屋の明かりで見えた時、
私はその顔を見て愕然とした。



泣いてる・・・・・?!



そして肩をガックリと落とした彼はリビングに戻り、
その大きな体をソファに投げ出した。
手にオーナメントを握り締めたまま、肩を震わせる孝天。



どうしたの? 何があったの??



私はソファに飛び乗り、そんな彼の腕の中に頭を潜り込ませた。
するとようやく私に気付いた彼が呟く。



「・・・思い出した。 思い出したんだ・・・。」



えっ? 何を・・・・。



「何か大切なことを忘れてるような気がしてた・・・すごく大切なこと。
 クソっ! なんで俺はこんな大切なことを忘れてたんだっ!!」



そう言った孝天は握り締めていたオーナメントを窓に向かって投げつける。
窓の傍に弾けて転がったそれを見てハッとし、私は慌てて窓越しに見える空に目をやった。



月・・・・・。



そう。 それは三日月の形をしたオーナメント。
そして窓越しの真っ黒な空には静かな光を放つ月が輝いている。
その月を見た瞬間、私の記憶の扉も少しずつ開いていった。













私が猫になる前の日。 私たちは買い物に出掛けた。
この季節はいたるところがクリスマス一色で、どこへ行ってもクリスマスソングが流れ、
色鮮やかなイルミネーションが街全体を包み込んでいる。
私はただ二人で街を歩いているだけで幸せな気持ちになって、
帰ってきてからもいつもよりテンションが上がったままだったように思う。



「ねぇ孝天! ウチにもクリスマスツリーを飾ろうよ!!」



何の気なしに言った言葉。
ただ街で感じた幸福感を、ツリーを飾れば家でも味わえるのではないかと思ったのだ。
そんな私をチラっと見た孝天はフッと笑みをこぼし、こう言った。



「キリスト教徒でもあるまいし・・・。
 俺は世間一般がそうだからといって流されるのは好きじゃない。」

「流されるとか・・・そんなんじゃなくって・・・。
 ほらっ! 家にクリスマスツリーがあるだけで、なんだか暖かい感じがするじゃない?」



その時、私は夢見ていた。
雪の降る凍えるような冬の夜、
恋人と二人でツリーの飾りつけをする暖かな部屋を・・・。
そして微笑みを交し合う彼と私を・・・。
けれどそんな私の夢も、彼の一言で現実に戻る。



「だいたいクリスマスなんてものは、企業の販売作戦にすぎない。
 ほんとのクリスマスっていうのはそんなに華やかなものじゃなく、もっと厳かなものだ。
・・・ほら、ボォっとしてないでコートくらい脱げよ。 飯の支度するぞ。」



私の言うことなど気にもかけず、
いつもと同じようにキッチンに消えていく彼の後姿を見て私はキレた。



「もういいっっ!! 孝天は私の気持ちなんてちっともわかってないんだから!!
 孝天のバカっ!!」



そのまま部屋を飛び出し、その後のことは覚えていない。
気付いた時にはもう猫になっていたのだから・・・・・。



どうしてもツリーが飾りたかったわけじゃない。
ただ私の声に耳を傾けてほしかっただけ。
ただちょっとした恋人気分を味わいたかっただけ。
そう、きっとそれだけ。
それは単なる私のわがままだった。



部屋を飛び出したのも本気で怒ったからではなく、
ただほんの少し、彼の気を引きたかっただけなのかもしれない。



まさかこんなことになるなんて・・・・・。










しばらくソファに腰掛け肩を震わせていた孝天は、
また何かを思い出したように、ふいに立ち上がり足早に寝室へ消えていく。
そしてその手に小さな包みを持ってソファに戻ってきた。
その包みは青いリボンがかけられている。
孝天はそのリボンをゆっくりと解き、そっと蓋を開けた。



「どこに行ったんだ・・・・アイツ。」



アイツ??



彼が愛おしそうに握り締める箱の中身を覗き込んで、私は驚いた。



その箱の中には月のモチーフがついた可愛いリング。



ずっと以前、二人で街を歩いていた時に、
彼がジュエリーショップのウィンドウを覗き込んでいたことがあった。
珍しいな・・・何を見てるんだろうと私も見てみると、
そこには小さな月がついたシンプルなリング。



「あれ、可愛い♪」



私が思わず声をあげると、微笑みながらまた歩き出した孝天。



今、彼が握り締めているのは、まぎれもなくその時のリングだった。



ひょっとして・・・・・。
私のこと、思い出してくれた・・・??



「姫・・・こっちにおいで。」



力なく私を呼ぶ孝天の声。
私が慌てて飛んで行くと、彼は私を膝の上に乗せて手をとった。
そして箱の中からリングを取り出すと、私の手にはめる。



「お前にやるよ。
 もうアイツは帰って来ない。
 アイツの指にリングをはめてやれるのは俺じゃないからな・・・。」



何言ってるの??
私には孝天しかいないよ!
アナタじゃなきゃダメなの!!
どうしてそんなことを言うの?



私はうなだれる彼の頬を流れる涙をそっと舐めた。



「アイツに愛想をつかされてもしょうがないな。
 いつでも傍にいてやれるワケじゃないし、
 誰よりも幸せにしたいと思うのに、逆に泣かせてばかりだ。
 きっとアイツは俺の傍にいない方が幸せになれる。
 わかってる・・・そうわかってるのに・・・・・。
 なぁ姫、それでも俺はアイツがいないとダメなんだ。
 どうすればいい・・・・・??」



私の手にはめられたリングをなぞりながら、ポツリポツリと気持ちを吐き出す孝天。



「アイツはどこに行ったんだっ?!」



孝天、私はココにいるよ!!
どこにも行かない! ずっとココにいるよ!!
ねぇ、私を見て!! 私を見てよっ!!



私は声の限りに鳴いた。
けれど彼の視線が私に向けられることはない。



あぁ、どうして私は猫なんだろう?
彼がこうして肩を震わせていても、抱きしめてあげることができない。
彼がこうして涙を流していても、拭ってあげることもできない。
彼が不安で心をいっぱいにしていても、耳元で「大丈夫だよ」と囁いてあげることもできない。



私は忘れていた。 こんな大切なことを・・・。



大好きな人に抱きしめてもらうことより、
大好きな人に愛を囁いてもらうことより、
大好きな人が悲しみに打ちひしがれている時、
そっと傍に寄り添って、同じ悲しみを分かち合えること、
一緒に涙を流すこと、
不安に震えるその肩を抱きしめてあげられることの方が本当の幸せなんだ・・・。



愛する人がこんなに苦しんでいても、ただ見ているだけでなんにもできない。
それがこんなに苦しいことだったなんて・・・。



彼を抱きしめてあげられる腕が欲しい。
彼の涙を拭ってあげられる手が欲しい。
彼に「大丈夫だよ」と囁いてあげられる声が欲しい。



なんで今、私は無力な猫なんだろう・・・。



私はソファを飛び降り、開け放たれたままのベランダへ出た。
そんな私を優しく照らし出す真冬の月。



このまま彼の傍にいたってなんにもできない。
このまま彼の傍にいるのは、辛すぎる。



私は柵の上に飛び乗り、そして彼を一目見て別れを告げた。



「ごめんね、孝天・・・。」



冬の突き刺さるような冷たい空気。
そんな中、私は柵の向こう側へ身を躍らせた。
落ちていく途中、私の目には優しい月が揺れる。



お月さま、私を哀れに思うなら、
どうか私を人間の姿で彼の元へ返して・・・・・。



冬の冷たい風を全身に受ける私は、最後に私を呼ぶ孝天の声を聞いた気がした。















チュン、チュン、チュン・・・・・。



遠くで鳥の鳴き声が聞こえる。
瞑ったまぶたの上に降り注がれる陽の光が眩しくて、
少しずつ夢の世界から現実に引き戻される私。



ん・・・、眩しい・・・・。



固く瞑りなおした目を、小さなまばたきをしながら開けてみると、
目の前には見慣れた穏やかな寝顔。
少し伸びた顎ひげを下から見上げていた。



孝天・・・眠ってる時は可愛い♪



いつも眉間にシワを寄せてしかめっ面を決め込んでる彼からは想像もつかないほど、
幼さの残るあどけない寝顔。
鳥のさえずりの合間に聞こえてくる静かな寝息が、私を穏やかな気持ちにさせた。



う~~~ん・・・・!!



私の上に乗せられた彼の腕が重くて、それを除けるように背伸びをしてみる。
すると彼も目を覚ましたみたいだ。



「ん? ・・・なんだ、もう起きてたのか。 珍しく早いなw」



珍しくって何よ・・・。
ん・・・? あれっっ??



私は何か違和感を覚えてガバっとその場で飛び起きる。



「なんだ? 寒いだろ・・・。」



寝ぼけ眼で私の腕をとり、また暖かい布団の中へ引きずり込む孝天。
そして私をクルクルっと自分の腕の中に巻き込んでしまった。



「しゃ・・・孝天・・・?」

「・・・・・なんだ?」



え~~っ!! 私、喋ってるっ!!



動揺する気持ちを抑えながら、彼にグルグル巻きにされた体からそっと腕を出し、
彼の背中に回してみる。
久しぶりに感じる彼の背中の感触。
暖かい・・・・・。



「孝天・・・私、猫じゃないよね・・・?」

「・・・なに言ってんだ、お前? 寝言は寝てから言え。」

「尻尾も生えてないよね・・・?」

「はぁ?! いったいなんなんだよ? バカか・・・。」



いつもと変わらない孝天。
よかった・・・あれは夢だったんだ・・・♪



私は彼を抱きしめることのできる事実が嬉しくて、思わず彼の胸に顔を埋める。
そんな時、ふと自分の手に違和感を覚え、彼の肩越しに自分の手をかざしてみた。



朝の光に透ける私の手。
その薬指には、あの月型モチーフのついた指輪が光っている。



えっ?! アレって夢じゃなかったのっ?!



再びドキドキと鼓動の激しくなる心臓。



「ねぇ、孝天・・・私・・・。」



そう言いかけた私の声にかぶさるように、孝天の眠そうな声。



「・・・お前、どこ行ってたんだ・・・?
 おかえり・・・・・。」



そのスグ後から聞こえる静かな寝息。
その規則正しい呼吸と鼓動が、私の頬に涙を伝わせる。



「ただいま、孝天。 
 もうどこにも行かないからね・・・。」














彼が目覚めたら二人揃って、
リビングで待っているだろうクリスマスツリーの飾りつけをしよう。
そして聖夜の月を二人で眺めるの。
きっと月は笑って私たちを見つめてくれる。
本当に人を愛するということがどういうことなのかを教えてくれたあの月が・・・。



私を抱きしめたまま眠り続けるサンタクロース。
そんなサンタを抱きしめて私も眠ろう。
もう少し・・・・あともう少しだけ・・・・・。




                              ~ END ~






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