ここはF4のことが大好きな私たちの頭の中で、日々繰り広げられているF4ワールドを公開している ブログです。 よろしければ一緒にスーワールドへ、迷い込みませんか?

スポンサーサイト

...--/--/-- --:--...

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



スポンサー広告 | TRACKBACK(-) | COMMENT(-) |



『 Reborn 』

...2009/03/03 00:02...

「ふざけんなよ・・・・。」



ある夜、TVのニュースを見ていた俺は思わずそう吐き捨てた。
ソファに並んで本を読んでいた彼女がビックリして顔を上げる。



「なに?」



そう言って俺の視線の先にあるTV画面に目を向けた彼女は、
そこで事件の詳細を語るキャスターに無言で見入った。








実の親による子殺し



この狂いきった世の中。
最近では特別珍しい話ではない。
でも俺はこういうニュースについ過剰反応を示してしまう。
この手の話を耳にすると、異常なほどの嫌悪感や怒りが湧いて出てくるのだ。



どうして自分のお腹を痛めて産んだ我が子に手をかけることができるのか?
そこには愛情だけではなく、罪の意識の欠片もないのか?
殺すくらいだったら最初っから産まなきゃいいじゃないか!!
自分の親に手をかけられた子供の気持ちはどんなに悲しかっただろう?
息が止まる最後の一瞬まで、親のことを信じていたんじゃないだろうか?



何をどう考えても、俺にはその親の気持ちが理解できない。
自分の子供を殺すなど、もう人間のする事とは思えなかった。



心の奥から込み上げてくる苛立ちや憎しみを堪えていたその時、
彼女が驚くような言葉を呟く。



「このお母さん、辛かっただろうね・・・。」



俺は自分の耳を疑った。



辛かった? 何を言ってるんだ?
殺された子供のことよりも先に、加害者である親の気持ちを思いやるなんて・・・・。
一体、コイツは何を考えてる??



思わず彼女の方を見ると、彼女は画面から目を離すことなく、
まるで自分のことのように悲しそうな顔をしている。



「お前・・・・・・今なんて言った・・・・?」



俺の発した声に、尋常ではないものを感じたのだろう。
彼女もビックリした顔で俺を見る。



「え?? ・・・・辛かっただろうと思って・・・。
 だって、我が子を殺すなんてこと・・・・・。」



彼女は明らかに戸惑っていた。
今の今まで穏やかにTVを見ていた恋人が、
身に覚えのない怒りの視線を自分に突き立てている。
あまりにも突然な豹変振りに恐怖さえおぼえているかもしれない。
でも今の俺にそんな彼女を思いやってやれるだけの余裕はなかった。



「は? 自分の子供を殺しておいて辛いだと??
 ふざけるのもいい加減にしろっっ!!」



いきなり声を荒げた俺に、彼女の体がビクンと跳ね上がる。



「孝天・・・・・どうしたの・・・・??」



恐る恐る訊ねる彼女。
俺はそのおどおどした視線にも苛立った。



「自分の子供を殺したんだぞっ!! 正気じゃない。
 動物だって自分の産んだ子供は身を挺してでも守るだろっっ!
 それを・・・自分の手で殺すだなんて・・・狂ってるっっ!!」



俺の怒鳴り声が部屋にこだました後、しばらくの静寂が訪れた。



わかってる。 俺はただ単に八つ当たりしてるに過ぎない。
彼女にはなんの非もないことも全てわかっていた。
でも俺の中の怒りは収まるどころか、どんどん加速していく。
それはどうやっても抑えることができなかった。



しばらくの間、不安な眼差しで俺を見ていた彼女だったが、
ある一瞬、その瞳の中に強い意志のようなものが宿ったかと思うと、
ゆっくりした口調で語りだした。



「そう・・・正気じゃないよね。 狂ってる。
 でもいきなりそうなったワケじゃないと思う。
 そうなるには何か理由があったはずでしょ。
 ずっとずっと長い間苦しんだのかもしれないし、
 そのことを誰にも言えなかったのかもしれない。
 何もないのに自分の子供なんて殺せないよ・・・。」



静かだけど、その奥には確固たる意思を感じられる声。
俺はそこに自分の行き場のない怒りをぶつけた。



「理由があれば何をしてもいいのかっ?!
 理由さえあればなんでも許されるのかっ?!」

「違うっ!! そうじゃない・・・そうじゃないよ。
 どんな理由があったって、
自分の子供を殺すなんてこと絶対に許されるワケがないし、
許しちゃいけないと思う!!
ただ私は・・・・・。」

「もういいっ!! これ以上お前と論議する気はない。
 時間も遅いから早く寝ろ!」



そう吐き捨てた俺を再び引き戻すことができないことを知っている彼女は、
唇を噛みしめながら俯いていたが、
俺の顔を見つめ一言「おやすみ」と言い、寝室のドアの向こうに消えて行った。
ドアが閉まる音と共に押し寄せてくる後悔の念。



あぁ・・・俺は何してんだ・・・・・。



重い足を引きずりながら、ベランダに出て風に当たる。
昼間は強い日差しが肌を焦がし痛いくらいに暑いこの季節。
でも、深夜の風は思いのほか冷ややかだ。



なんで俺は、こんなに一人で熱くなってんだろう?
アイツが悪いワケでもなんでもない事はわかっているのに、
アイツの真っ直ぐな思いが痛くてつい声を荒げてしまった。



俺にとって彼女の傍は一番癒され安心できる場所だ。
でも俺は、時々そこに居ることがとても苦しくなる。
彼女の笑顔はいくら見ていても飽きず、この笑顔のためなら何でもできると思うのに、
時々その笑顔が眩しくて直視できないことがある。



それはきっと、彼女が愛に満ちた人間だから・・・。



彼女は優しい両親の間で、他の兄弟と同じように愛をいっぱい受けて育った。
友達にも恵まれ、周りにはいつも笑顔が絶えず、
彼女もまたそんな周りに応えながら生きてきたに違いない。



それに比べ、俺は愛というものを知らずに育った。



仕事人間で息子のことにはなんの関心もない父親に育てられた。 
いや、実際に俺を育ててくれたのは、父親に仕えていた大人たちだ。
優しかった母は心身ともに弱く、幼い俺を置いて出て行った。
大人になって久しぶりに再会した母から事情やその時の母の気持ちも聞いて納得はしたが、
やはり長年抱いていた「捨てられた」という感覚は、そう簡単に消し去れない。



そんな思いが俺の心を捻じ曲げているんだろう。
彼女の傍にいると、自分の心の歪みを強く感じて辛くなることがある。
単なるひがみだとわかっていても、
太陽の光のように真っ直ぐ注がれる彼女の視線に耐えられなくなる時があるのだ。



俺の心はいつも不安定。
こんな俺の傍にいるより、他の男と一緒にいた方が彼女にとって幸せなことだと思うし、
彼女の幸せのためだったらそれも仕方がないと思う。
何よりも彼女の傍にいる自信がなくて、
突然愛想をつかされるのが怖くて、つい彼女を冷たく突き放しにかかってしまう。
そんな俺の態度が一番彼女を傷つけると知っていながら・・・・・。



かと思えば、本当に彼女の周りに他の男の影が少しでも見えると不安になり、
「嫉妬」という名の感情に捕われる。
俺はそんな時の自分が恐ろしい。
彼女を押し潰してしまうのではないかと思うほどの強い感情を、
自分自身でコントロールできなくなるからだ。
でもそんな俺の気持ちを、彼女は難なく受け止める。
優しく明るい笑顔と細くしなやかな腕で・・・・・。



あぁ、どうして俺はこんなにも歪んでしまったんだろう・・・・・。



ため息混じりに空を見上げると、そこには薄い月が浮かんでいた。



「俺はお前と似てるかもしれないな。」



太陽の光がなければ輝けない月。
だけど決して太陽の近くには寄り添えない月。



「お前はそれでも、ずっと片想いし続けるのか?」



コンコン。



ガラスをノックする音に驚き後ろを振り返ると、
彼女が真っ白なナイトドレスを着て立っている。



「孝天・・・・。」

「どした? 眠れないのか?」



彼女の瞳にうっすらと浮かぶ涙。



「孝天、ごめんね・・・。」



優しい月を映したその涙は、今にも零れ落ちそうに揺れた。
それと同時に俺の心も揺れる。



「何が? ・・・なんでお前が謝る?」

「だって・・・。」



ベランダに出てくることもできずに、自分のつま先を見つめる彼女。



「バカだな、お前は。」



たまらなくなった俺は傍に寄り、彼女の細い肩を抱いた。



「だって・・・孝天、すごく辛そうな顔してたから・・・。」



そう言った彼女が震える腕を俺の背中に回す。
その腕は温かくて、遠く母に抱かれた日を思い出させた。



「お前は・・・みんなに愛されて生きてきたんだな。」

「え??」



彼女が驚いたように俺を見上げる。



「お前、性善説を信じてるだろ?」



涙に濡れたその顔があまりにも可愛くて、俺は思わず笑ってしまった。



「性善説って・・・。 なんの話をしてるの?」



俺は彼女を腕から離し、部屋の中に入る。
そしてソファに腰を下ろすと、独り言のように呟いた。



「お前は自分の周りの人間がホントはみんな善人だと信じてる。
 それは愛されてきた証拠だ。」

「孝天・・・。」

「俺はそうは思えない。 他人なんてそう簡単に信じられるか。
 俺は生まれてきてからずっと愛を知らずに生きてきたのに・・・。」

「愛を知らないなんて・・・どうしてそんな・・・。」

「父は仕事にしか興味がなかった。
 俺の面倒を他人に任せ、自分はほとんど家にも帰らず、
 俺が何かしても叱ることもしなかった。
 母はどんな事情があったにせよ、俺を置いて出て行ったまま、
 会いに来ようともしなかったし・・・・。
 周りの大人たちは親父への建前のせいか、俺にはほとんど腫れ物に触るような扱いで、
 誰も本当の俺の気持ちを理解してくれようとはしなかった。
 俺は贅沢な暮らしの中で、いつも独りだったんだ。
 愛なんてもの、知らなくて当然だろう?」



俺の前に周りこんできた彼女の手がしっかりと握り締められ、
ワナワナと震えているのが視界に入る。
そっと上を見上げると、口を真一文字に結び、
ふたつの瞳からは真珠のような涙をポロポロと零している彼女の顔が見えた。
その表情で、怒っているのは一目瞭然だ。



「お・・・おい。」



戸惑う俺の顔を見据えながら、彼女は自分の拳で涙を拭う。



「そうね、当然だわ。 アナタに愛を感じとることはできない。
 だってアナタは自分の世界に閉じ篭って誰も受け入れようとはしないんだもの。
 どんなにたくさんの愛が周りにあっても、
今のアナタのままじゃきっと全部枯らせてしまうわね!!」



普段めったに声を荒げない彼女が、怒りで全身を震わせている。
けど、彼女の強い口調に俺の中の怒りも触発された。



「お前・・・何が言いたいんだ?」



下から睨みつける俺の視線に、彼女が怯むことはない。
俺を上から見下ろしながら、話を続けた。



「今のアナタのままじゃ、一生愛なんて感じられないって言ってるの。
 さっきから聞いてれば、『してくれない、してくれない』って・・・・。
 じゃあ訊くけど、アナタは誰かに『愛してほしい』って言ったことある?!
 誰かに『寂しいのは嫌だ。傍にいてくれ。』って訴えたことがある??
 一人殻に篭って化石のようにジッとしてるか、暴れて怒りをぶつけるだけで、
 一体どうしてほしいのか、何を待っているのか、
何に対して怒っているのかも言わなかったクセにっ!!
それじゃ周りの人はどうにかしてあげたいって思っても、
なんにもしてあげることなんてできないわよっ!
アナタみたいな人はどれだけ愛してもらったって、1gも感じることはできない。
勿体ない話よね。 アナタを愛してる人はたっくさん居るっていうのに・・・。」



彼女は時々声を荒げながらも、大粒の涙を零し続けている。
その涙と、彼女に図星を指されたことで、俺の怒りの火が少し静まる。



「誰が・・・俺を愛してるって言うんだ。」

「私よっっ!!」



大きな瞳を見開いて、俺に訴えかける彼女。
その叫びにも近い訴えに、俺の罪悪感が痛んだ。
そうだ・・・彼女は俺がどんな仕打ちをしてもずっと待ち続けていてくれた。
俺が逃げ腰になっても追いつめるようなことはせず、
ただ黙って見守っていてくれていた。
なんで彼女にこんな酷なこと、言ってしまったのか・・・??



「ホント、悔しいわよ。 こんなに想っても1gも伝わってないなんて。」

「・・・・だったら・・・別れるか?」



自分が悪いとわかっていても素直になれない俺は、
思ってもない言葉を口にしてしまう。
身に染み付いてしまった悪いクセはそう簡単に直らない。



すると彼女は俺の横にあったクッションを手に取り、
俺めがけて投げつけた。



「別れるなんて・・・そんな簡単に言わないでよっ!! 
 私が前回、どんな思いでアナタを待ってたか知ってて言ってるのっ?!
 あんな思いは一度だけで充分よ。
 もう二度とあんな思いはしたくない・・・・・。」



彼女はとうとうその場で泣き崩れた。
俺のせいだ・・・。
泣かせたくないと思っているのに、いつも俺が泣かせてしまう。
どうしてだろう。



「ゴメン・・・悪かった。」



そう言って肩を抱こうとした俺の胸ぐらを掴んだ彼女は、
自分の感情をぶつけるように叫び続けた。



「ホントに別れたいと思ってるの? そうなの?
 だったらちゃんとそう言って!!
 アナタがどうしたいのか、私にどうしてほしいのか、
 ちゃんと言葉で伝えて!! アナタの本心が知りたいのっ!!
 じゃなきゃ、どうしていいのかわからないじゃない!!」



腕の中で震える彼女。
俺が逃げていたことで、コイツはどれだけの想いを飲み込んできたんだろう?
俺が避けていたことで、コイツはどれだけの涙を流してきたんだろう?
腕の中で声を上げて泣いているのは、紛れもなく俺を愛してくれてる人だ。
俺は今までコイツにさえも心を閉ざしてきたというのか・・・?



「お前と付き合い始めて別れたいなんて思ったことは一度もない。
 むしろずっと傍に置いておきたかった。
 でも握り締めたらお前がどこかに行ってしまいそうで・・・。
 ホントはずっと傍にいてほしいと思ってる。」



彼女は何も言わずにただ泣き続けた。
そして一頻り泣いて落ち着いた後、少し俺を見上げて微笑みながらこう言った。



「ちゃんと言えるじゃない・・・w」



涙でグショグショになったその彼女の笑顔を、きっと俺は一生忘れない。
心の底が震えるほど愛おしいと思える笑顔だったから・・・。



「・・・うるさい。」



少し照れくさくなって、俺は彼女を抱き締めた。
腕に・・・体に・・・その想いを込めて。
その時、俺はふと気付いた。



俺は今、初めて「愛」というものに触れてるんじゃないか??



これまでもずっと彼女を愛おしいと思ってきたけど、
いつもレースがかかっているように、直接触れている感覚がなく、
なんとなくはがゆい思いをしていた。
でも俺はそれが「愛」だという自覚もなかったし、
こういうものなんだと自分に言い聞かせてきたのだ。



「愛」というものは一方通行ではいけないんだ。
きっと自分が心を開いて初めて感じることができるもの。
それがなんとなく感覚でわかった気がした。



「孝天、実はね・・・。」



彼女が俺の腕の中で呟くように話し出す。



「なんだ?」

「実は私、この間アナタのお父さまに会ったの。」

「親父に??」

「うん。 先週、ウチの会社に来て下さって・・・。」



なんでまた・・・??
確かに彼女は親父の会社の取引先に勤めている。
だが会長である親父と、一社員である彼女とでは接点のひとつもないはずだ。
ましてや彼女の会社に自ら出向くなど・・・。
何を企んでるんだ??



俺は彼女の肩を抱いたままソファに腰を下ろし、
彼女の話を聞いた。



「お前、親父に何か言われたのか?」

「ううん。 ただ・・・。」

「ただ??」

「孝天のこと頼むとおっしゃって・・・私に頭まで下げて下さったのよ。」

「親父がっ?! ・・・まさか・・・。」

「私も驚いた。でもホントなの。」

「なんでそんな・・・・・。」



俺の頭は完全に混乱していた。
俺の記憶の中の父親はどちらかというと創業者に多いワンマンタイプ。
人の意見など聞かず、自分の独断でなんでも決めてしまう。
覚えているのは眉間にシワを寄せたしかめっ面だけで、笑った顔など見たことがない。
仕事で家を空けることの多い父だったが、たまに一緒に食事をしても会話はなく、
ただ黙々と目の前に出された料理を口に運ぶだけだった。
そんな親父が今さら何を・・・・・??



「孝天。 アナタはお父さまに愛されてないって思ってたかもしれないけど、それは違う。
 ちゃんとお父さまはアナタのこと愛してくれていたのよ。」

「う・・・嘘だ。」



喉の奥に何かが詰まったように、息苦しくなる。



「ホントよ。」



親父の愛など一度も感じたことはない。
感じたのは大きな背中の冷たさだけ。
どれだけその背中に抱きつきたいと思ったことか。
でも、その背中に感じる凍るような冷たさが俺を拒んでるように思えて、
一度もそうはできなかった。



「孝天、アナタはお父さまによく似てる。
 彼はどんなにアナタを愛しても、それを伝える術を知らなかった。
 気持ちを伝えるのが下手なのね。
 すごく後悔してらしたわ。 どうしてもっと息子と話をしなかったんだろうって・・・。
 お母さまと別れた後、幼い心を痛め壊れてしまったアナタに
どうしてあげればいいかわからなかったんだって。
そうしてる間にアナタが心を閉ざしてしまって・・・・・。
きっと彼も苦しかったんだと思う。」

「でもアイツは・・・仕事にいっぱいで・・・。」

「ある時、思ったんですって。
 『親が子供にできることは、子供が何かをしたいと思った時に好きにさせてやることだけだ』って・・・。
 せめてアナタが何かしたいと思った時に、お金の事でその道を諦めなくていいように、
 お金をたっくさん用意してやろうと思ったんですって。
 だから仕事に打ち込んで、あんなにも会社を大きくしたのね。」

「そんな・・・金なんて・・・。」



喉の奥のつっかえはどんどん大きくなり、まともに呼吸もできなくなってきた。
次第に体も震えだす。



「そうよね、子供にとってお金なんて二の次なのに・・・。
 ホントに不器用な人。
 ただ黙って抱き締めるだけで伝わる気持ちもあるのにね。」

「・・・・・・。」



俺はとうとう声を発することができなくなった。
喉の奥から込み上げてくる感情。
これをなんと呼べばいいのか、俺は知らない。
ただ遠い昔にこんな思いをしたことがあったような気がした。



「アナタを外国の知り合いに預けた時だって、
 何度もアナタに会いに行ったんだって。
 だけど結局アナタに会うことなく帰ってしまった。
 自分が出て行くと余計にアナタの気持ちを乱してしまうだろうと思ったのね。
 でも、アナタの姿はいつも遠くから眺めてたって。
 アナタが元気に暮らしてるのを見ると安心できたって言ってたな~。」



俺はもう限界だった。
知らぬ間に涙が零れ、膝の上で握り締める手に落ちる。
するとそんな俺を彼女が優しく抱き締めた。
優しい春の風のように・・・・。



「孝天。 アナタはちゃんと愛されてるよ。
 今も、昔も、これからだって・・・。
 大丈夫、大丈夫だよ。」



コイツはいつからこんなに大人になった?
ずっと俺がついていないとダメなヤツだと思っていた。
子供のように目の離せないヤツだと思ってた。
なのに今、真っ白なナイトドレスを着て俺を抱く姿は聖母マリアのようだ。
いつの間にコイツは女になったんだ??



女はすごい。
俺はきっとこれから、コイツの腕の中で生まれ変わる。
幾度も脱皮をくり返し、生まれ変わる蝶のように・・・。
女の腕はか細いけど、男はそこで生まれ変われるんだ。
抱かれる度に・・・何度も・・・何度でも・・・・・。



明日、コイツを連れて親父に会いに行こう。
不器用な親子だからきっと、そんな急には気持ちを伝えることができないかもしれない。
だけどゆっくりでいい。
今までの時間を取り戻し、男同士これからのことを話し合える日がいつか来ればそれでいい。
今からだって決して遅くはないはずだから・・・・・。



「孝天・・・・眠っちゃったの・・・??」



耳元で囁くお前の声。
ホントはちゃんと聞こえてるけど、もう少しこうしていたい。
ほんのもう少しだけ子供のままでいさせてくれ。
俺をそうさせてくれるのはお前しかいないから・・・。



俺の髪を優しく撫でる彼女の細い指。
その懐かしいようなくすぐったい感触を忘れないように、
目を瞑ったままされるがままになる。



窓の外には静かに輝く月。
その光だけは太古から変わらず、いつまでも俺たちを照らし続けていくだろう。
明日の夜、新しく生まれ変わった俺の上にもきっと・・・・・。





                                ~ END ~






スポンサーサイト

孝天ver Reborn | TRACKBACK(-) | COMMENT(0) |





この記事に対するコメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する







CALENDER
10 ⇔ 2018/11 ⇔ 12
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
プロフィール

Y&Y

Author:Y&Y
FC2ブログへようこそ!

カテゴリー
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
FC2カウンター
フリーエリア
現在の閲覧者数: