ここはF4のことが大好きな私たちの頭の中で、日々繰り広げられているF4ワールドを公開している ブログです。 よろしければ一緒にスーワールドへ、迷い込みませんか?

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『 Back to Back 』 ~ scene 4 ~

...2009/05/17 10:47...


~ scene 4 ~



窓から差し込む眩しい陽の光。
綿毛のような暖かい何かに包まれたまま、まだどこか心地いい場所を漂う私。



遠い昔に感じた優しい感覚を思い出せた気がした。
無条件に誰かに守られてる、包まれてると感じられた遠い昔の感覚・・・・・。



あと少し。 あともうちょっと。
手を伸ばせば届きそうなのに、掴めない。
両手を広げて捕まえたら、腕の間からこぼれていくような気がして・・・・・。
それでも私は追いかけた。
どうしてもそれが欲しいと思えたから・・・・・。









ジュ~ジュ~・・・・コポコポ・・・・トントン・・・・・。



「ん・・・・。」



閉じた瞼の向こう側が妙に眩しくて、そっと目を開けてみると、
私は真っ赤な部屋から、真っ白に輝く部屋に移されていた。



・・・・・ココ、ドコだっけ・・・・・?



柔らかく暖かい布団から目だけを凝らして、自分の周りを見回す。
窓から入る光が、部屋の中でダンスをしているように乱反射して、
まともに目を開けていられない。



眩しい・・・・・。



眉間にシワを寄せ目をこすりながら、その場で体を起こしてみた。



ココ・・・・・あの男の部屋だよね。
アレって夢じゃなかったんだ・・・・・。



まだ鈍痛の続く私の頭の中に、昨日の記憶が少しづつ蘇る。



優しく大きい男の腕の中。
久しぶりに心から安心して眠りに落ちていった。
深い眠りの湖に沈む直前、「Let it be」の優しい旋律と共に、
深く響く声が聞こえた気がする。



「安心しろ。 俺が傍にいるから・・・。」



でもアレは夢だったのかもしれない。
出逢ったばかりの、こんな危険な女にそんな事を言う男なんてあり得ない。



ベッドから足を下ろし、いろんな音がする賑やかなキッチンへと近づいていく。
壁の端からそっと中を覗き込めば、男がスグに気付いて私に目をやった。



「おはよう。 目が覚めたか?」



私はなぜか再び壁の影に隠れてしまう。
どんな顔をして彼と向き合えばいいのかわからなかったから・・・・。



少しの間戸惑っていたら、壁の向こう側から私の頭の上に男が顔を出す。



「おはようと言われたら、おはようと返すもんだ。
 挨拶はキチンとしろ。
 んったく・・・・・幼稚園で習わなかったのか・・・?」



男の手が私の頭をコツンと小突く。



「・・・お・・・おはよう・・・ございます。」



私が戸惑いながらも答えると、男はニコリともせずに「ん。」と持ち場に戻る。



変な男。



私がムッとしながら再びキッチンを覗き込むと、男の白い包帯が目に入った。
不自由そうに包丁を握っている。



昨日の・・・・。
私のせいだよね。



「貸して。 私がやるわ。」



男の手から包丁を奪い取ると、一瞬呆気にとられた男の顔が見えた。
そしてリズムよくキャベツを刻み始めた私。



「慣れたもんだな。」

「まぁね。 子供の頃から自炊してりゃ、これくらい普通でしょ。」

「なるほどな。」



男の真っすぐな視線を感じつつ、
手元が震えていることに気付かれないように、
必死に平常心を保とうと、全神経をキャベツと包丁に向ける。
彼の眼差しを受けている私の手が熱い。









テーブルの上に並べられたシンプルな朝食。
ほのかに湯気をたてている二つのカップ。
キチンと並べられたフォーク。



全てが陽の光を受けてキラキラと輝いている。
今の私には眩し過ぎるくらいに・・・・・。



「早く食え。 冷めちまうから。」

「うん・・・。」



私はフォークを手に取り、「いただきます」と言った男にチラっと目をやる。
男はサラダを口に運ぼうとして、私の視線に気付いたようだ。
「ん。」と顎を突き出し、私にも促す。
私はさっきのことを思い出し、慌てて手を合わせ、「いただきます」と言った。
クスっと笑う男の顔。



不意に胸がキュンとなる。
こんな顔して笑うんだ・・・。



「こ・・・この部屋、明るいね・・・。」



何か言わなきゃと焦り、どうでもいいような事を口走ってしまう私。
男はそんな私に目もくれず、サラダをほおばった。



「あぁ。 小さくても日当たりのいい部屋がいいと、
不動産屋に頼んで探してもらったんだ。」

「ふぅ~ん・・・。」



私はフォークを握り締めたまま、再び部屋を見回す。
昨日の部屋とは思えない。
まるでまったく違う部屋にいるみたいだった。
昨日はあんなに真っ赤に染まった部屋だったのに・・・・・。
黒い家具が白い光によく映えるモノトーンの世界。




「あぁ~~~~!!」



ある事を思い出し、いきなり大声をあげる私。
カップに口をつけていた男が、危うく口に含んだコーヒーを吹き出してしまうところだった。



「な・・・なんだっっ?!」

「か・・・会社・・・。 忘れてた・・・・。」



ガクっとうなだれる私を横目に「なんだ、そのことか。」と言わんばかりの表情の男。



「心配するな。 俺が電話を入れておいた。」

「え~~っ?! なんですって?!」



口の中に入れたパンをコーヒーでゴクンと流し込んだ男は、
何気にサラっと流す。



「ああ。 お前の携帯から電話しといたから。」

「な・・・なんでそんな勝手なことをっっ?!
 ってか、なんでアンタが私の会社知ってんのよ??」

「お前の携帯、会社と上司の番号しか入ってなかったぞ。」



飄々とそう言った後、動じることもなく黙々と目の前の朝食を口の中に放り込んでいく男を、
私はただポカンと口を開けて見ているしかなかった。



「早く食えよ。 ちゃんと食わないから、そんなにヒョロヒョロなんだ。」



罪悪感の欠片もないそんな男の態度にムッときた私は、
テーブルにフォークを叩きつけた。



「なんでアンタにそこまで首突っ込まれなきゃいけないの?!
 私になんか恨みでもあんのっ?!」



そう怒鳴り散らした私の目の前に、男が無言でニュっと手を突き出す。
その手には少し赤く滲んだ包帯が巻かれていた。



あ・・・・・・。



「わかった・・・わかったわよ。
 でも今日一日だけだからね。 
 そんなに長い間、仕事休むワケにはいかないんだから・・・。」



男はニッと微笑み、また顎を突き出して、
私に朝食を食べるようにと促す。
私の口からは自然と溜息がこぼれていた。



「はぁ~、んったく、アンタって・・・・・。」

「孝天。」

「えっ・・・?」



男はフォークを歯で噛みながら、私を見つめる。



「俺は孝天。」



二人の間に光が遊ぶ。



「あっそ・・・。」



私はあまりにも光が眩しくて、慌ててレタスを口に放り込んだ。












「お兄ちゃん、今日はコレが安いよ!」

「あら今日は彼女連れなの?? いいわね~。」

「まけておくから、買ってってよ♪」

「この間のキンピラ、美味かったよ。 ありがとな~!」



人ごみの中、ヤツの背中を追いかけて歩けば、
あちらこちらから声がかかる。



「今晩、何が食いたい?」



時々立ち止まり、店先の食材を品定めする男が問いかける。



「今晩? ・・・・・今晩ってなに?」

「晩飯に決まってるだろ。 和食がいいか?」

「何言ってんのっ?! 夜には帰るわよ。」



横を向き、投げやりに答えた私の前に、再び無言で差し出される包帯。



「・・・・んもう。 なんでもいいわ!」



男は「それでいいんだ」と言わんばかりに、
口をギュッとつぶり私の頭をポンと撫でる。
私はドキっとして、彼の手が当たったところに手をやった。



「食い物の好き嫌いはなさそうだな。
 人嫌いではあるみたいけど・・・。」



図星を指された私は、自分の顔が赤くなるのを感じる。



なんなのよ、この男・・・。
まったく無関心なのかと思えば、勝手に人の心の奥底にズカズカと入り込んでくる。
なんだか気分が悪かった。



「おい。」

「・・・・・。」

「おいっ!」

「なにっ?!」



少し離れたところで怒ったように答える私に、男が手招きをする。
包帯が妙に痛々しく見え、私の中の罪悪感を掻き立てた。



仕方なく傍に寄っていくと、男が私の耳元で囁く。



「あのイモ、美味そうだな。
 お前、行って値切って来い。」

「はあっっ?!」



何を考えてんだか、まったく読めない男。
こんな男は初めてだ。



「イヤだ。 なんで私がそこまでしなきゃなんないの?
 だいたいこんな市場じゃなくて、スーパーで買い物すればもっと楽なのに・・・。」



そんな私の抵抗も、彼がニュっと手を出せば虚しく消え去っていく。



「わかったわよ。 やればいいんでしょ、やれば。」



私はふてぶてしく八百屋の前に立つ。



「すいません、コレ下さい。」

「ハイハイ、150円ね~。」



後ろを振り返り、口パクで「150円だって。」と言った私に、
ちょっと離れて見ていた男がまた包帯の手を下に向けてヒラヒラさせ、もっと値切れと合図する。



もぉ・・・・・。



「おじさん、コレもうちょっとまけてくんない?」

「え~? このジャガイモはホクホクしてて美味しいんだよ。
 おっきいでしょ? こんなにいいジャガイモはあまり手に入らないよ。
いくらお姉ちゃんがキレイでもまけられないな~。」



私はまた後ろを振り返り、男に首を振る。
すると偉そうに腕を組んだ男は同じように首を振り返し、顎を突き出した。



仕方ないな~、もう。



「ね~、お願い。 私、ココ最近まともにご飯食べてないんだ。
 もうフラフラなのよ~。 ね、もうちょっとだけまけてよ??」



気の良さそうなそのおじさんは、私の全身を気の毒そうに眺めた後、
奥から袋一杯の野菜を持ってきて、そこにジャガイモの入った袋を突っ込むと私に差し出した。



「姉ちゃん、ちゃんと食べなきゃダメだよ。
 これは店先に出せないクズ野菜だけど、ちゃんと食べられるもんだから持ってきな。
 ジャガイモも一袋100円にまけとくよ。」



しばし何も言えない私。
初対面なのに・・・こんな私の嘘をすんなり信用するなんて・・・・。



また振り返ると、男がニッコリと微笑み頷づくと、
ゆっくり私めがけ近づいて来る。
そして私の横に辿り着くと、おじさんの顔を見て微笑んだまま、
私の頭をガシガシっと撫でた。



「おじさん、いつもありがとう。
 今度、また魚の煮付けでも持ってくるから。
 じゃ、コレ100円。」



そう言って気のいいおじさんにお金を手渡すと、そのおじさんは目を丸くする。



「いや~、お兄ちゃんの彼女だったのかい?
 なんだ~。だったらクズ野菜なんか出さなかったのに・・・。
 兄ちゃんの魚の煮付けは最高だからな~。」

「いや、けっこういいの入れてくれてるよ。
 これで今日の晩飯はポトフに決まったな。」

「いいのかい、それで?」

「ああ、充分だ。 ありがとう。」

「ちゃんと彼女に食べさせてやりなよ?」

「はははw ああ。」



袋を受け取った私たちは、また人ごみに紛れて歩き出す。
少しばかりの後ろめたさと、なんとも言えない暖かい気持ちで、
背の高い男を見上げ何か言おうとした時に、後ろから呼び止められた。



「お兄ちゃん、待って~!」



その声に振り返ると、小柄なおばさんが息をきらして走ってくる。
そして私たちに追いつくと、ハアハアと息があがったまま話しだした。



「ご・・ごめんね~、来てるなんて知らなくてさ~。
 ウチの人、なんにも言わないもんだから・・・。
 この間持って来てくれた煮物美味しかったよ~。
 お礼と言っちゃなんだけど、コレ、彼女に食べさせてあげな。 
 旬にはまだ早いんだけど、コレは美味しいの。
 お兄ちゃんの彼女ならさ、ちゃんと食べさせてあげなきゃダメだよ~。
 あ~あ~、こんなにカリカリに痩せちゃって~。
 お兄ちゃん料理上手いんだから、無理やりにでも食べさせてあげるんだよ?」



おばさんは男相手にまくしたてるだけまくしたてると、
今度は私に向かって喋りだした。



「お姉ちゃん、ちゃんと食べるもんは食べなきゃダメ。
 人間はね、お腹いっぱい美味しいもの食べて、
 いっぱい眠って、いっぱい笑ってりゃ、必ずいいことがあるの。
 そんな捨てたような顔してないで、しっかり食べて、しっかり眠って、しっかり笑いな。
 このお兄ちゃんの傍にいればきっと大丈夫♪ 私が保証するよ♪」



優しい眼差しで微笑んだおばさんは、私の手を握っている。
固くてガサガサだけど、とっても暖かい手・・・。



「あら、ヤダ!! ウチの人に怒られちゃうわ~。
 早く店に帰らなきゃ!! じゃ、またね~~!!」



そう言っておばさんは、嵐のようにもと来た道を、慌てて引っ返して行く。
私たちは人ごみに消えていくその後ろ姿を見送った。



「美味そうだ。」



男がおばさんの持ってきてくれた袋を開けて、私に見せる。
中を覗き込んだ私の瞳には、恥らうように真っ赤に染まったイチゴが映った。
昨日のあの部屋とは違う赤。
情熱的に燃えるような部屋の赤とは違って、
暖かく心がホンワリと染まるような気がする赤。

 

「ホントだ・・・美味しそう。」



私は少し涙ぐみそうになっていた。
なぜだろう??
この10何年間、一度として泣いたことなどなかったのに、
昨日泣いてしまったから涙腺が壊れてしまったのだろうか。



「悪いことしちゃったな、嘘ついちゃったし・・・。」



すると男が私の頭を撫でてこう言う。



「嘘なんかじゃないさ。
 お前、普段まともにメシ食ってないだろ?」



私は男に子供扱いされ、なぜかくすぐったい気持ちになっていた。
いつもの私ならきっとキレてるはず。
なのにこの男に子供扱いされることは、イヤじゃなかった。
ただ少しばかり戸惑うだけ。
こんなの私じゃないよね。



頭の上に置かれた男の手を避けるように、私は前を向き歩き出す。



「アンタには関係ないことよ。」



そう言った私の後を一歩遅れて男が歩く。



「そうだな、確かに。」



彼の一言が耳に届くと、胸の奥がギュッと痛くなった。
バカだな、私・・・・。











夕暮れの中、家に辿り着き、食材を袋から出した後、
二人はまた一緒にキッチンに立つ。



「ね、お塩が切れてるみたいだけど?」

「・・・ホントだな。 ちょっと、悪い。」



男が後ろに回り込み、私の頭の上にあるキャビネットに手を伸ばす。
背中に感じる彼の体温。
少し覗き見てみると、彼の喉元が見えた。
男の人の喉だ・・・・・。



「ん。」



塩の袋を私に手渡す彼。
受け取る時に指先が触れ、そこだけが生きてるように脈うった。



「あ・・・ありがとう。」



・・・・・ヤバいな。
あまり深入りしない方がいい。



私の中の警報装置が鳴っていた。









二人で作った夕食を食べ、洗い物をした後、
彼が洗っておいてくれた私の服に着替えを済ませて洗面所から戻ってくると、
テーブルの上にイチゴがのせられていた。



「食ってから帰れよ。」

「私はいいよ。 アンタが食べて。」

「食ってけよ。 おばさんはお前にってくれたんだし・・・。」



あの夫婦の優しい表情が思い出される。



「ん、じゃ、ちょっとだけ。」



二人無言でイチゴを食べる。
甘酸っぱくて冷たい、春の味がした。



「どうだ? たまにはあんなところもいいだろう?」



私は今まで、できるだけ人と接触したくなくて、
買い物もコンビニやスーパーで済ませていた。
口を開くのさえ煩わしかった。



人と接触すると、なにかしら摩擦が起こる。
きっといいこともあるんだろうが、
私にとっては「何か起こるかもしれない」という恐怖の方が大きかったのだ。
何かしら起こるかもしれない可能性が少しでもあるのなら、
最初から関わらない方がマシだ。
人間は所詮一人なんだから・・・・・。



「面倒くさい。」



そう言ったとたん、あのおばさんの手の感触が蘇る。
優しくて暖かくて、強い・・・あの手。



でもあの手は私のものじゃない。
いつかは私を離れていく手だ。
いつかは放さなきゃいけない手なのだ。



「なぁ、今度ライブをやるから、一度聴きに来ないか?」



自分の手をしげしげと眺めていた私は、顔を上げ男の顔を見る。



「ライブ?」

「ああ。」



男は私を見つめて頷く。



「じゃ・・・・手、不自由・・・だよね?」

「心配するな。 ギターはメンバーが弾くから。」

「アンタは何すんの?」



不思議そうに訊ねる私に、下を向きフッと笑った彼が答える。



「歌。」

「ふぅ~ん・・・・。」



膝を立て、その上に伸ばしたままの腕を乗せた男が、
俯いたまま私を横目でチラっと覗いた。
また私の心臓が高鳴る。
気分が悪くなるほど、鼓動が大きく響いた。



「ま、頑張ってよ。 きっと私は行かないと思うけど。」



警報装置がMAXに鳴り響いている。
早く逃げ出さなくっちゃ!!



「じゃ、私、帰る。 ありがとうございました。」



私は深々と頭を下げ自分のバッグを掴むと、
急いで玄関へと向かった。



玄関で靴を履いていると、背後から深い声が響く。



「お前をそこまで縛っているものはなんだ?」



動きが止まる。 頭の中が真っ白だ。



「そんなこと、アンタには・・・・・。」

「そう。 確かに関係ない。
 だが、お前はいつまでそうやって生きていくつもりだ?
 もういい加減、自分を開放してやれ。 自由にしてやれよ。」



俯いたまま止まっている私の瞳が、次第に涙で膨らんでくる。



なんでこの男は、こんなにも私の急所を突いてくるんだろう?
なんの目的があって・・・・何がわかってて、こんなにも私を苦しめるんだろう?



「・・・・・アンタ、なんなの・・・・?
 いったい何がしたいの? 何が言いたいのよっ?!
 私のことなんか、もう放っておいてよ!!」



そう言って立ち上がった私の腕を引き寄せ、自分の腕に強く抱く男。



体中がビリビリと痺れ、息が荒くなる。
でもいつもの発作は起きなかった。



「やめて!! 放せ!! 私に近寄らないで!!」



ありったけの力を振り絞って、彼の腕から抜け出そうともがく。



「怖がるな。 俺に全てを預けろ。
 俺がお前を自由にしてやる!!
 だから俺の傍にいろ!」



そう言った男は私の顔を手で挟み、口づけた。
荒々しいキス。
でも甘酸っぱいイチゴの味がするキスだった。



なんで・・・・・??



私の瞳からはまた、止められない涙が溢れる。
泣きたくない!! なのに・・・・・。



唇が離れた瞬間、私は男の顔を殴る。
その拍子に横を向いた彼の顔に長く黒い前髪がかかった。



「・・・私のことは放っておいて!
 もう二度とあんな思いするのはイヤっっ!!
 もう一度あんな思いをするくらいなら、最初っから誰とも関わらない!!
 ずっと独りでいる!!
 私の気持ちなんて、アンタになんかわかりっこないっっ!!」
 


私は靴を履くのもそこそこに、ドアを押し開け飛び出した。
ドアの外は冷たい風。



これが現実。
これが私の住む世界。



アイツのいる部屋の中は甘酸っぱい香りが漂い、春のようだった。



でも、あれはきっと夢。
たったひと時、夢を見ただけ。



なのになぜ、こんなにも風が冷たく感じられるの?
こんな寒さなんて、全然平気だったのに・・・・なのに・・・。
アイツの体温がまだこの体に残ってるせい。
きっとそのせい。



頬を滴り落ちる涙を堪えようと上を仰ぎ見ると、
夜空には白い三日月。



「なんで黙って見てんのよっ!!
 なんとか言え~~!!
 元の私に戻してよ~~~!!」



あの日の月が蘇る。
あの日も私を黙って見下ろしていた月。



「大っ嫌いよ、アンタなんて!!
 どっかに消えちゃえ・・・・・・。」



私を包む冷たい冬の風。
ドクドクと流れ出した熱い血が、私の肩に脈を打たせる。 



大丈夫・・・・・大丈夫・・・・・。



明日からはまた、何事もない日々が続くはず。
いつもどおりの毎日が・・・。



私は自分の腕で肩を抱き、歩き始める。
そしてもう、沈黙の月を見上げることはなかった。



                        ~~ to be continue ~~





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