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『 Voice of Snow 』 ~ 前編 ~

...2009/05/17 15:24...



『 Voice of Snow 』 ~ 前編 ~



誰かの腕に包まれる。
ホワっと甘く暖かい匂いがし、その匂いに瞳を閉じたまま安堵する私。
その柔らかく大きな何かをもっと感じたくて、
私も自分の腕をその誰かにそっと伸ばしてみる。



だけど・・・私がこの腕に抱いたのは自分自身。
私を包んでいたのは誰?
どこに行ったの?
どうして私は、いつもこうして一人残される?



真っ暗闇の中、私はただ涙を流しながら自分自身を抱きしめ、立ち尽くす。



体に大きな穴がポッカリ開いてしまったような喪失感。
全てのものがガラガラと音を立てて足元から崩れ落ちていくような絶望感。



悲しいことに、私はこの絶望の谷から私を救いだしてくれる人が誰もいないことを知っていた。
頭上を見上げたらそこには大きく青い空が広がっていて、
背中の翼を羽ばたかせればそこから飛び立てるのかもしれなかったが、
私にはそうする意義もわからなかったし、見上げるだけの気力もない。
それよりもただそこにいてうずくまり、ひたすら自分が朽ち果てるのを待つ方が、
私にとってはよっぽど有意義なことのように思えた。












「おい・・・おい・・・。」



長いトンネルを抜けるような光に導かれ、
閉じていた瞳をゆっくり開ける。
私には不似合いな朝の眩い光が、目を開けることを拒んでいるようだ。



「おい・・・そろそろ起きろ。」



頬を撫でる乱暴な指の感触に、やっとの思いで目を開けた。
目の前には不機嫌そうな男の顔。



「メシにするぞ。 早く顔洗ってこい。」

「・・・・うん。」



なんとなく目覚めの悪い朝。
以前の私には珍しいことではなかったが、ここしばらくなかったことだ。



今日も天気がいいな・・・。



部屋に差し込む真っ白な光とは裏腹に、心には黒く憂鬱な夢の名残り。
私は重い頭を抱えながらベッドから足を下ろし、洗面所へと向かった。











「どうした?」

「え・・・?」



口にサラダを運びながら、私には視線をやらずに彼が訊ねる。



「何かあったのか?」

「・・・・・?」

「嫌な夢でも見たか?」

「なんで?」



ひたすら自分の手元だけを見ながら朝食を取っていた孝天が、
不意に手を止め私を見つめる。
真っ直ぐに突き刺さるその強い視線は私を激しく動揺させた。



「さっき泣いてたから。」



泣いてた? 私が??



「怖い夢でも見たのか?」



私は今、彼の視線の中、どんな風に映っているのだろう?
その黒く輝く深い瞳が痛くて、今度は私が自分の手元に視線を落とした。



「覚えてない・・・。」

「そうか。」



そう言った後も彼はしばらく視線を外さず、私の言葉を待っていたようだったが、
私が黙々と朝食に手をつけ始めたのを見て、ようやくその視線を窓の外に移した。



「いい天気だな。」

「うん。」

「あ・・・今日は帰りが遅くなるから、先に寝てろ。」



彼の帰りが遅くなることはそんなに珍しいことではない。
いつからかこの部屋に帰るようになっていた私はそんな時、
自分の部屋に帰ることにしていた。
一人でいることには慣れっこだ。
けれど、二人でいることが当たり前のこの部屋に一人っきりでいることは、
私にとって耐え難いことだった。



「そう、わかった。 私のことは気にしなくていいよ。
 今日はウチに帰るから・・・。」

「・・・・大丈夫か?」

「いやだな・・・大丈夫だよ。」



言葉数の少ない彼の視線に、私はいつまで経っても慣れない。
孝天の瞳はいつも真っ直ぐ私に向かってくる。
そして心の奥の奥・・・そこから何かを引き出そうとする。
好奇や哀れみの視線ではなく、こうして真っ直ぐに向けられる視線に晒されることは、
今までの私の人生にあまりないことだった。
自分を覆い隠しているものを全て脱がされ曝け出されるようで、すごく不安になる。
いつも曇りのないその瞳を真っ直ぐ見つめ返すことができなくて、心臓がザワザワと音を立てた。
まるで初めて嘘をついた子供のように・・・・・。



「・・・ゆっくりしてきなよ。 ホントに私は大丈夫だから。」









その夜、仕事を終えた私は、いつもとは違う方向の電車に揺られていた。
窓から見える見慣れていたはずの街並みが、日を追うごとに見知らぬ街のように見えてくる。
それは説明のつかない不思議な感覚だった。



もうすぐいつもの駅に着く。
毎日ここで電車を降り、あの灯りのつかない部屋に帰っていたのが、
もう随分昔のことのように思えた。



部屋の鍵を開け、電気をつけ、暖房のスイッチを入れる。
そしてコートを脱ぎハンガーにかけ、キッチンに入りヤカンを火にかける。
お湯が沸くまでの間に部屋着に着替え、お風呂にお湯を溜める。
コーヒーを入れそれを飲みながら、ベッドの前で膝を抱える。
温かいお湯に身を浸し髪を乾かしたら、ベッドに入り孤独を抱き眠りにつく。



毎日繰り返される私だけの儀式。
どれくらいの間、私はその中だけで暮らしてきたのだろう?
そこから抜け出すことなんて、少しの予想もしなかったし、
抜け出したいとも思わなかったあの頃・・・。
私は何を思い、何を考えて生きていたんだろう?



電車がプラットホームに滑り込み、目の前の口を開いた時、
私の中の何かが足を引き止めた。



あの部屋に帰りたくない。
誰でもいい。 誰か傍にいてほしい。
まだ一人にはなりたくない・・・もう少し・・・もう少しだけ・・・。












いつの間にか、私はあのお気に入りの店の前に立っていた。
もうどれくらいココへ顔を出していなかっただろう?
あの頃、屍のような私を黙って受け入れてくれたこの店。
全てが優しく感じた。 私がそこにいることを許してくれてるように思えた。
ココにだけ自分の居場所がある気がした。



懐かしい重いドアを押し開けると、いつものように気だるいジャズの調べが流れ出てくる。
けれど一歩足を踏み入れた時、なんとなく違和感のようなものを感じた。
身の置き所に迷っていると、カウンターの中から私を呼び入れる声が・・・。



「やぁ、久しぶりだね~。 元気だった?」



暗い店の照明には似合わない人懐っこいその笑顔が、
そう言って私の心の置き場を作ってくれた。



「うん、元気だったよ。 マスターも相変わらず元気そうだね。」

「ああ、俺は相変わらずさ。 えっと・・・。」



マスターが周りを見渡す。
さっき感じた小さな違和感は、そこにあった。
店内が満員だったのだ。



「店は繁盛してるみたいじゃないw」



そう。 私がよく来ていた頃は、こんなに店内が賑やかになることは滅多となかった。
静かにただグラスと語り合える場所。
誰もがつかず離れずの距離で、自分だけの世界を作れる場所だったのだ。
人とは交わりたくはないけれど、一人でいたくない。
そんな孤独な夜に転がり込む・・・ココはそれにうってつけの場所だった。



「ごめん、今日は指定席が空いてないんだ。
 どうしよっか?」



私は周りを見回して、壁際の一番端っこ、ドアに一番近い席を見つけ、
そこに足を進めながらマスターに言った。



「いいよ、気にしないで。
 それよりいつもの・・・作ってくれる?」

「そうかい、悪いね? わかった・・いつもだなw」



そう言ってホッとしたように微笑んだマスターの顔。
私はコートを脱ぎ、壁際のその席に座り店内を眺めた。
座る場所が違うからか、初めて来た店のようにどこか落ち着かない。



仕方ないよね・・・・こんな日もあるか。



「ありがと。」



目の前に置かれたグラスに、あの頃の私が映る。
ユラユラと揺れながら、どこにも居場所を見つけられず、
なんの感情も持たず彷徨ってた自分が見える。



今の私は・・・・・?



正直言って、私は今の自分が見えず戸惑っていた。
以前の私は全ての感情を捨て、何が起こっても動じることはなかった。
全てのことがこんなもんだと諦め、世捨て人のように世間の渦の外に身を置き、
そこにだけ存在していたから・・・。
けれど孝天という男に出逢ってからというもの、
あの視線に晒され、常に自分の中の何かが揺れ動いている。
今までの自分が大きな音をたて崩れ落ちていき、私の一番奥にあるものが引っ張り出され、
痛みも、怒りも、悲しみも、・・・全ての感情がそこから押し出されてきて、
どうしていいのか途方に暮れ立ち尽くすばかりだ。



私はどうなってしまったんだろう?
私はどうなってしまうんだろう?



私は生まれて初めての体験に心が震えていた。



「あ・・・始まるよ♪」



グラスに向かって声にならない声で話しかけていると、
マスターが意味ありげに目配せをした。
その途端、大きな拍手と共に小さな店内がざわつく。
私は客が期待の眼差しを送るその先に視線を移してみた。
そこには・・・・・小さなステージの上でギターを抱え立っている孝天がいる。



「孝天・・・?」

「あれ? 知らなかったの?
 彼、時々こうして歌いに来てくれてるんだよ。
 お客さんにも好評で、今ではこうやって孝天の歌目当てにくる客も増えたんだ。
 なんだ・・・二人はてっきり・・・。」



そう言って微笑んだマスターの声も、私にはうつろにしか聞こえない。



聞いてない・・・・そんな事、一度だって・・・・・。
そっか・・・時々帰りが遅くなる夜は、ココに来て歌ってたってワケだ。
へぇ~、なるほどね。



孝天はステージの上に用意された小さなスツールの上に腰掛けると長い足を組み、
その上にギターをのせて爪弾き始める。
そしてその旋律に自分の声をのせ歌い出した。



初めて聴く彼の歌声。
泣きたくなるほど切ない声。
心のひだ、ひとつひとつに語りかけてくるような、
心の奥の一番弱いところをそっといたわり包んでくれるような・・・そんな声。



孝天の声を聴いてると、
過去のいろんなことが頭の中を駆け巡り、気が遠くなりそうだった。
今いるこの世界が夢なのか、現実なのか・・・そんなこともわからなくなるくらいに・・・。



瞳から涙がこぼれる。
私は心が震えているのを感じずにはいられなかった。



なんの言葉も発することなく、孝天はただただ歌い続けた。
ある時は、自分の宝物をかき集めそれを胸に抱くように優しく、
そしてある時は、思いのたけをぶつけるように激しく・・・・。
そこには彼の創り出す独自の世界があるように見える。
私はなぜだかわからないが、
その世界を彼と共有しているような・・・そんな錯覚に陥った。



数曲歌った後、孝天は「ありがとう」とだけ言い残し、
店の奥に消えていく。
私はといえば、まだ彼の歌声が残した痺れるような余韻に浸っていた。



「いいよね~、孝天の歌はいつ聴いても感動する♪
 プロでデビューしてくれたら、私、CD何枚でも買うのに♪」



ひとつ向こうの席に座った若い女が陶酔したように呟く。



「もう彼はココに戻って来ないよ。
 いつも歌い終わるとスグに裏口から抜けて帰っちゃうんだ。
 なんなら追いかけたら?」



マスターが放心状態になっている私に、
他の客には聞こえないような小さな声で囁いた。
私はその声で我に返り、ニッコリと微笑む。



「・・・うん、ありがと、マスター。」



私は急いでコートを羽織りお金をカウンターに置くと、
ドアを出て裏に回った。



彼の顔を見たらなんて言おう?
この言葉にできない気持ち・・・伝えたい。



彼の位置からは、きっと私の姿は見えなかっただろう。
私が歌を聴いたことを知ったら彼は・・・・・驚くだろうか?



そんな事を考え、こぼれる笑みを抑えられないまま裏の路地を曲がると、
ちょうど孝天が出てくるところだった。



「孝・・・。」



声をかけようとしたその時、孝天の後ろから長い髪の女が出てきた。



「孝天っ! ちょっと待ってよ! 待ってってば!!」



その甲高い声に立ち止まった彼。
私はなんだか見てはいけないものを見た気がして、思わず壁に身を隠した。



「なんだ?」



ため息と共にそう返事をした彼の背中を、女が抱きしめる。



「どうして? アナタはどうして何も言わずに私の前から消えたの?
 私はアナタを愛してたのにっっ!! アナタだってそうでしょ?!」



え?? なに・・・? なんの話をしてるの?
ひょっとして彼女は・・・孝天の恋人・・・?



「どうして黙ってるのよ?! アナタにも何か言いたいことがあるでしょう?
 黙ってないでなんとか言ってよ!!」

「俺も悪かったとは思ってる。 だが、今さらどうしようもないだろう?」

「そんなことないっ!! 今からでも遅くないわよ!
 また二人でやり直そう。 ね、そうしよう?」

「おい・・・少し落ち着け。」



それまで背中越しに話していた孝天が彼女の方に向きかえり、
彼女の肩に手を乗せる。
そしてジッと彼女の瞳を見つめ、ゆっくりと語りかけた。



「もう終わったことだ。 蒸し返さない方がお互いのためだと思うが。」

「イヤよ! なんにも終わってないっ!! 
 私はアナタなしで暮らしていけないの!!」



そう叫んだ女が彼の胸に顔を埋めて泣き叫ぶ。
孝天はしばらくそのままの姿勢で立ち尽くしていたが、
ついに彼女の髪に手をかけ、背中に手を回した。



「そうだな・・・確かにお前は一人では生きていけない女だ。」



イヤだっっ!! これ以上、見たくない!!



彼の手が他の女の髪を撫で、抱きしめてるのを見た瞬間、
心の奥で何かが壊れる音が聞こえた。
私は血が噴き出す心を手で押さえ、その場を立ち去る。
耳の奥には彼がさっき歌っていた歌がエンドレスで流れ続けていた。













遠くから近付く靴音。
鍵を開ける音が聞こえ彼が部屋に入ってくる。
部屋の明かりをつけた孝天がベッドに座る私を見つけ、驚いた顔で叫んだ。



「ビックリしたっ! ・・・お前、今日は自分の部屋に戻るんじゃなかったのか?」



私は俯いたまま、答える。



「うん、帰るよ。
 その前に・・・・ちょっと挨拶してから帰ろうと思ってさ。」

「挨拶? ・・・なんの挨拶だ?」



彼が眉間にシワを寄せ、怪訝そうな顔で再び訊ねる。



「短い間だったけど、ほんの少し昔の気持ちを思い出せて楽しかったよ。
 けど・・・これも幻想だってことがわかった。
 私は一人でも大丈夫だから。 ありがとね。」



私はそれだけ言うとまとめてあった荷物を肩にかけ、
彼の横をすり抜けようとした。



「ちょ・・・ちょっと待てっ!!
 なんのことだ? お前、何を言って・・・?」

「いいの。 今後、私には一切関わらないで。
 ただ私はアンタと違って、ちゃんとケリをつけてから出て行きたかったからさ。」



ありったけの皮肉を込めた私の台詞。
それが今の私にできる精一杯の強がりだ。
瞳からは涙が零れ落ちそうになっていたが、それを喉の奥に力をいれグッと堪えた。



今度こそ部屋を出て行こうとした私の腕を彼が捕らえる。



「俺を置いて出て行くのか?」

「えっ? 何を言っ・・・?!」



私の言葉を待たずに孝天の唇が私の口を塞いだ。



なんでそんな悲しそうな顔をするの?
置いて行くのは私じゃなくてアンタでしょう?!
もう夢を見て、期待して、そして裏切られるのはイヤなの。
耐えられないんだよ・・・・・。



「っつ・・・!!」



顔を離した孝天の唇の端に血が滲む。
そして私の口の中には、彼の血の味が広がった。



「私を傷のある女だと思ってナメてるから痛い目にあうんだよっ!!
 覚えておいて。 
 こんな野良猫みたいな私にだって、ちゃんとプライドはあるんだってことを。
 お情けで拾われるなんてごめんよ・・・。」



孝天はそんな私の言葉を、顔にかかった前髪を払おうともせず、
ただ手の甲で唇を拭いながら黙って聞いていた。



これで終わり。
もう元には戻れない。
さよなら、孝天。
アンタとは最後まで背中合わせだったね。
アンタとならいつか遠い未来まで見れる気がしてたけど、それもただの夢だったみたい。
きっとこの部屋を出て行ったら、またこの肩の傷が疼きだす。
そのたびに私はアンタのことを思い出すと思うよ。
でも引き返すことはしない・・・できない。
もう大切なものを失うのは・・・・・イヤなの。
ごめんね・・・孝天。



部屋のドアを出ると、いつかと同じ冷たい風。
涙を堪えるため上を見上げると、都会の暗い夜空に冷たい月が輝いていた。



私はアンタと一緒に生きていく運命なのかもね・・・。



無言の月に向かってそう呟くと、私は前を向いて歩き出す。
もう甘い幻想なんて見ちゃいけない。
自分が傷つくだけ。
何も考えず、何も感じず、ただ毎日を過ごしていれば、
そのうち人生の終わりが私を迎えに来る。
一人で生きてく覚悟さえしていれば、怖いものなんて何もない。
そう・・・・・もともと何もない人生なんだから・・・・・。



真冬の都会の夜は見かけだけ優しくて、ホントは冷たい。
人は皆、それを認めたくなくて誰かと寄り添う。
私はそんな見せかけだけの人生は送れない。
本当の姿が見えた時、きっと私は壊れてしまうから・・・・・。
だったら私はその冷たい風に同化して歩こう。
それが私にはお似合い。



冷え切ったアスファルトの上を、靴を鳴らして歩く。
ほんの少し前の私がそうしてきたように・・・・・。




                         ~ to be continue ~
 





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