ここはF4のことが大好きな私たちの頭の中で、日々繰り広げられているF4ワールドを公開している ブログです。 よろしければ一緒にスーワールドへ、迷い込みませんか?

スポンサーサイト

...--/--/-- --:--...

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



スポンサー広告 | TRACKBACK(-) | COMMENT(-) |



『優しい秘密基地』

...2009/05/17 23:47...







ある晴れた日曜日、私は駅で彼と待ち合わせ。
随分早く着いちゃった。
もっとゆっくり出てきてもよかったかなぁ?
でも、家に居づらかったんだもん・・・。










少しすると、まだ約束の時間よりずっと早いのに、
駅からなだれ出てくる人の波に紛れて、彼の姿が現れる。



「ヴァネス、こっちよ!!」



彼は私を見つけると、満面の笑みで私の方に走ってきた。



「ごめん!!待たせた??」

「ううん。さっき着いたところよ。・・・ヴァネス?」

「ん・・・? なに?」

「大丈夫???」

「・・・えっっ? 何が??」

「うん・・・なんか顔がこわばってるよ? いつものヴァネスじゃないみたい」

「そ・・そうか?? そんな事ないよ・・大丈夫・・・多分」



彼は無理に笑顔を作ってみせた。
その顔があんまり可愛くて、思わず笑ってしまう。
すると彼は少し怒ったように言った。



「なんだよ?・・・そりゃ緊張するだろ? 
 恋人の兄弟に初めて会おうってんだから!」

「ごめん、ごめん! だっていっつも余裕綽々のヴァネスが、 
 あんまり緊張した顔してるもんだから・・・初めて見た、ヴァネスのそんな顔♪」

「ったく・・・人の気も知らないで・・・」



そう、今日は今から二人で我が家に行って、
私の恋人であるヴァネスを、兄達に紹介するのだ。
彼が緊張するのも無理がない。



「なぁ、お前の兄弟ってどんな人? やっぱ怖いの??」



ヴァネスが心配顔で尋ねる。



「ん~~、そうねぇ、一番上の兄はそんなことない。
 私にはすご~~く甘いの♪大抵のことは許してくれちゃう♪
 弟は何回か会ったことあるよね? 
 今日も家にいろって言ったんだけど、
 友達ん家にゲームのソフト返しにいかなきゃいけないからって、
 さっき出ていったわ。 ありゃ当分帰ってこないわね。」

「えぇ~~?! 俺、アイツだけが頼りだったのに・・・」

「フフ♪ 問題は・・・二番目の兄ね」

「二番目って・・・すぐ上のお兄さん??」

「そう。ヤツは結構、手ごわいかも??
 四人兄弟ん中で、私が唯一の女の子だからか、私にはすっごく厳しいんだ。
 もううるさいのよ!門限とか、ボーイフレンドの事とか・・・」



すると、彼の顔がより一層こわばる。



「ウソ・・・もしかして、俺殴られるかな?」

「アハハ! 大丈夫だよ♪ 
 確かにキレやすいけど、基本的に私に甘いのは上の兄とおんなじだから。」

「ど、どうしよう・・緊張してきた・・・」



私は並んで歩く彼の顔を覗き込んで聞いてみた。



「ね、面倒な女と付き合っちゃったって思ってる?」



すると彼は、緊張していた顔を緩め、私のおでこを指ではじきながら、
いつもの明るい笑顔で答えた。



「今更そんな事思わないよ。
 だってそれは、お前と付き合いだして、
 初めてケンカした時に思っちゃったもん♪
 あの時にもう諦めた!」

「えぇ?!どういう事よ? それは、私自身が厄介な女だって言ってるの?!」

「そのとおり!! だって、お前怒らすと、すっごく怖いからな♪」

「なんですって~~?!」

「ハハハハ!!」



彼が私をからかうように小走りで駆けていくのを、私は追いかけた。







家の前の道に出ようと、大きな通りを左に入る。
すると家の前に誰かが仁王立ちになって立っているのが見えた。



「ケンちゃん・・・!!」

「ケンちゃん??」



ヴァネスが私の顔を不思議そうな眼差しで見た。



「あれが問題の二番目の兄」

「えっっ?!」



彼は、私と繋いでいた手を慌てて放した。



「ケンちゃん、何してんの?」



私は兄に近づきながら尋ねる。



「何って・・・お前が遅いから待ってたんだよ!」



明らかに機嫌が悪そうだ。
トレードマークの眉間のシワがいつもより深い。



「遅いって・・・まだ約束の時間より、かなり早いよ?」



私は腕の時計を見ながら言った。



「・・・つべこべ言わずに、早く入れ!」



決まり悪そうにそう言うと、兄はサッサと家の中に入って行った。
取り残された私とヴァネスは顔を見合わせ、しばらく突っ立っていたが、
そのウチ彼が恐る恐る口を開いた。



「なぁ、ひょっとしてお兄さん、怒ってる?」

「ううん。いつもあんな感じ。
 ・・・でも今日はいつもより2割増しってとこかな?」

「えっっ??」



そう言うと、それきり彼は何も話さなくなった。



「とりあえず、ウチに入ろう♪」



彼は何度か無言で頷くと、私の後をついて歩き出した。









家に入ってリビングに彼を案内すると、一番上の兄がキッチンから出てきた。



「おかえり♪ 早かったな?」

「うん♪ あれ? 旭って今日、休日出勤って言ってなかったっけ? 
 出なくていいの?」

「あぁ♪お前が初めて彼氏を連れてくるっていうのに、
 仕事なんかしてられないよ。 まぁ、座って!」



一番上の兄は、ソファを手で指しながら笑顔で彼に話しかける。



「はい・・・ありがとうございます!」



ヴァネスもさっきの緊張した面持ちから、いつもの笑顔に変わった。
二人並んでソファに座ると、兄も私達の前のソファに腰を下ろした。



「ね? ケンちゃんは?」

「あぁ、アイツならキッチンでお茶の用意をしてるよ。
 さっきまで出たり入ったりで、なんの用意もできてなかったから、
 俺が用意してたら、いきなり入ってきて、
 『俺がやるからアニキは座ってろ』って・・・ハハ。
 まぁ、アイツがやった方がなんでも美味いんだけどな♪」

「ん、まぁね♪
 ケンちゃんの入れてくれたジャスミンティー、ホントに美味しいんだもん♪ 
 あ、ヴァネス、紹介するね。彼が一番上の兄!」



旭は慌てて立ち、ヴァネスに向かって手を差し出した。



「初めまして、兄の旭です。いつも妹がお世話になってます。」



二人は固く握手をした。
ヴァネスも笑顔で応える。



「は、初めまして!! ヴァネスといいます。 よろしくお願いします!!」



二人は笑って、またソファに腰掛けた。



「ま、大した家でもないから、気兼ねせずにくつろいで♪」

「はい、ありがとうございます!!」

「しかし、コイツと付き合うと何かと大変じゃない?」

「旭、何? 大変って??」

「いや、お前、なんもできないし、結構ワガママだからサ」



横でヴァネスの笑いを堪えるのが聞こえた。
私は彼を肘で突きながら言う。



「ヴァネス、なんで笑ってんのよ??
 ・・・それに旭だって何にもできないじゃない!!」

「俺は男だし、それにワガママじゃない♪」



旭が笑いながらヴァネスに目で合図を送ると、
彼は顔を伏せて笑いを堪え始める。
私がふくれっ面をしていると、ひどくぶっきら棒な声が後ろから聞こえた。



「別に結婚するってワケでもないんだから、
 なんにもできなくてもいいんだよっっ!」



振り返ると、二番目の兄がトレーにお茶を入れたカップを乗せて、
キッチンから出て来たところだった。



「ケンちゃん♪ 私のはジャスミンティーにしてくれた?」

「ほら!濃い目に入れてきてやったぞ。 お前、濃さにはうるさいからな」

「ありがと~♪」



ケンちゃんは旭の横に座り、それぞれに入れたお茶を、テーブルの上に並べた。



「あ・・・えっとぉ、さっき会ったよね?
 紹介します。 二番目の兄のケンちゃん♪
 そして彼がヴァネス。 前に言ってたでしょ?
 スリに合った時に偶然彼がいて、そのスリ追いかけてくれたの。
 それで知り合ったのよ♪」



ヴァネスは旭の時とは対照的に、緊張の面持ちで立ち上がり、
今度は彼の方からケンちゃんに手を差し出した。



「初めまして! ヴァネスといいます。 よろしくお願いします!!」



すると驚いたことに、ケンちゃんはプイっと横を向いて、
彼の差し出した手に目もくれなかったのだ。



「おい、ケン! ちゃんと挨拶しろ!!」



旭に怒られて、渋々ヴァネスの手を取るケンちゃん。
ホントに子供のようだ。



「仔はどこ行ったんだ?」



ケンちゃんは相変わらず不機嫌そうに言う。



「あ、友達んとこ。 そのウチ帰ってくるでしょう♪」



私が少しでも場の空気を明るくしようと、いつもより高めのトーンで答えたが、
その後が続かなかった。
シーンと静まり返った中、どうしようかと思ってると、
いきなりケンちゃんがヴァネスに冷たい視線を向けながら、口を開く。



「仕事、何してんの?」



ギョッとして、私と旭が顔を見合わせる。



「ケンちゃん、いきなり何て言い方してんのよ!!」



私が少しキツめの口調でケンちゃんに言うと、
彼は眉間のシワをもひとつ深くして私を睨む。



「お兄ちゃんと呼べ!! お前は何回言ってもわからないのか?!」

「だって・・・ちっちゃい時からそう呼んでたんだもん。
 いつもは何にも言わないのに・・・どうしたの?」

「そうだよ。 俺なんか呼び捨てだぞ? 旭、旭って・・・」

「うるさいな!! アニキは黙ってろよ!!!」



旭は肩をすくめて、私達二人を見た。
ケンちゃんは依然としてヴァネスを見据えている。
ヴァネスは緊張しながらもしっかりとした口調で答えた。



「僕はダンサーを目指しているので、
 時々舞台で躍らせてもらったり、
 ダンスのインストラクターをしたりしています」



すると、ケンちゃんの眉がピクリと動く。



「ダンサー??」



私はケンちゃんが眉を動かすのが、あまりいい意味でないことをよく知っていた。



「あ・・ヴァネス、とってもダンス上手いの♪
 この間も大きなクラブのイベントのトリで、ソロで躍らせてもらったのよ☆
 すっごくカッコよかったの!!
 でね、なんか有名なスカウトマンが来てたらしくて、彼のダンス見て、
 今度事務所に来て、ダンス踊ってみてくれないかって言われたのよね?」



ケンちゃんの眉がまたピクリと動く。



「何ぃ? クラブだと??」



あ、マズイと思って旭をチラリと見ると、ヤッちゃったなぁという顔。



「お前、クラブなんか行ってたのか??」

「あ・・・でも、ちゃんと門限には帰って来てたでしょう?」

「行ってたのかと聞いてる。」

「あ・・・うん・・・」



ケンちゃんは怒りでいっぱいの顔で立ち上がり、今度は大きな声で吠え出した。



「あんなところに行っちゃダメだって、何度も言っただろ?!」

「でもケンちゃん、私、もう20歳だよ?!
 いつまでも子ども扱いしないでっっ!!」



私も負けずに怒鳴り返した。
すると今度はヴァネスに向かって吠え出した。



「お前、妹をそんなとこに連れ出していたのか?!
 嫁入り前の娘だぞ?!わかってんのか?!」

「すみませんでした。 僕の不注意です。」



頭を下げた彼を見たら、なんだかたまらなくて、
なにがなんだかわからないまま、私は叫び出した。



「ヴァネス!! なんで謝るのよ?! 謝ることなんてない!!
 だって、私が勝手にヴァネスの踊ってるとこが見たくて行ってたんだし、
 ヴァネスはちゃんと門限に間に合うようにって
 家まで送ってくれてたじゃない!!
 ケンちゃん!! なんでそんな事言うのよ?!
 私だってもう大人なんだから、自分の事は自分で責任を持って決めるわ!
 ヴァネスには何の責任もないでしょう?」



するとケンちゃんは、すごい剣幕でまくし立てた私の言葉にかぶせるように、
今までに聞いたこともないような大きな声で怒鳴った。



「自分の責任だと?! まだまだお前は子供だ!! 生意気な口をきくな!!
 ダンサー?!なにがダンサーだ?!
 そんなどうなるかもわからないような事やってるヤツに、
 お前の面倒がみれるか!!
 絶対お前らが付き合うことは許さない!
 絶対許さないんだからな!」

「私は誰かに面倒みてもらわなくても、自分で生きていけるわ!!
 ダンサーの何が悪いのよ!!
 ヴァネスがその夢のためにどんなに努力してるか・・・。
 彼のダンスも見た事ないクセに!! なんにも知らないクセに!!
 ケンちゃんこそ、偉そうな事言わないでよ!!」

「なんだとぉ~~!!
 こんな口をきくようになったのも、お前と付き合うようになったからだ!
 全部お前が悪いんだよ!!」



ケンちゃんがヴァネスの胸ぐらを捕まえた。



「おい!! ケン、やり過ぎだ! 放せ!」



旭がそれを抑える。
私はその光景を見て、ブチンっと切れた。



「もう!! ケンちゃんなんて大っきらい!!」



そして玄関に向かって走っていく。
途中、やっと帰ってきた我が家の末っ子の仔仔とぶつかった。



「あ、姉ちゃん♪ ヴァネス、もう帰っちゃった?
 一緒にやろうと思って、また友達にソフト借りてきたんだけど・・・♪
 あれっっ?? どっか行くの??」



私はそんな弟の呑気な言葉に答える余裕もなく、外に飛び出した。








私はある場所に身を潜めていた。
もう家を飛び出してから、どれくらいの時間が過ぎただろう?
とっくに日も暮れて、空には星が瞬きだしていた。



「ヴァネス、置いてきちゃった・・・。
 あの後、どうしちゃっただろう?」



私は少し強くなってきた風に、体をブルっと震わせた。





ここは小さい頃よく来た、私の秘密基地。
少し小高い丘の上の茂みに隠れて建つ、古い掘っ立て小屋だ。
もう何年も雨ざらしになっているので、屋根もなく、空の星が容易に見れる。
もう何年も前に取り壊されていると思っていたのだが、
興奮して何も考えず走っていたら、知らない間にここに来ていた。
最後に来てからもう10数年は経つのに、
私の子供の頃の記憶とほぼ同じ形で残っていたのだ。
私は近くにある木の箱の上に腰掛けて、今日あった事を思い返していた。



ったく・・・ケンちゃんのあの態度、なによ?!
私の事、いつまで子ども扱いして縛りつけるつもりかしら?
ヴァネスの事だって、ちゃんと話も聞かないで頭っから決めつけて・・・。
石頭なんだから・・・!!
でも、ちょっと言い過ぎたかな?・・大っキライなんて言っちゃった。
・・・ケンちゃん、怒ってるかなぁ??



私は壁にもたれて、そんな事をつらつらと考えているウチに、
いつの間にか深い眠りに落ちて行った・・・。





「おい・・・いつまで泣いてるんだよ? もうすぐ日が暮れちまうぞ?」



私が目を開けると、そこには小学校の高学年ぐらいの男の子が、
私の顔を覗き込んでいた。



「ケンちゃん・・・」



そう、小学生のケンちゃんだった。



「また母さんに怒られたんだって?」



小さなケンちゃんは、不思議そうな顔で自分を見つめる私に、
ニッコリと微笑むと頭を優しく撫でながら言った。



「俺も一緒に謝ってやるからさ、一緒に帰ろう♪」



そうだった。
私はいつも嫌な事があったり、親に怒られたりすると、
ここに来て思いっきり泣いていたのだ。
そしてここを知っているのは、私とケンちゃんだけ。
仔仔はまだほんの赤ん坊だったし、旭もここの事は知らなかった。
ここは私とケンちゃんだけの秘密基地だったのだ。
だから家で私が帰って来ないと大騒ぎになると、
必ずケンちゃんがここまで迎えに来てくれた。



「ケンちゃん、お母さんまだ怒ってる?」

「大丈夫、もう怒ってないから。
 ・・・ったく!!お前はみんなを心配させてばっかなんだから・・・」



ちょっと怒った口調でそう言うケンちゃんだけど、
ホントは怒ってないのがわかる。
口の端が笑っているのだ。
私はいつもそんなケンちゃんの顔を見ると、安心して家に帰ろうと思うのだった。



「でも・・・今日のお母さん、ものすっごく怒ってたよ?
 『もう帰って来なくてもいい!!』って言ってたもん。」

「・・・お前、バカだな! 母さんがそんな事、本気で言うワケないだろ?!
 ほら、帰るぞ!!」



小さなケンちゃんが、私の手を取る。



「でもぉ~~、怖いよ!!」



半ベソをかいている私を前に、頭を掻きながら困っているケンちゃん。



「あっっ!! そうだ!・・・いいモンやるよ。 手ぇ、出してみろ♪」



ポケットの中を探りながら、嬉しそうに言う。



「え??」

「いいから!!」



小さなケンちゃんの手が、もひとつ小さな私の手を掴んで何かを握らせた。
私は小さいけれど、何か硬くてゴツゴツした感触に、慌てて手を開いた。



見るとそれは仮面ライダーの小さなキーホルダー。



「ケンちゃん、これ・・・ケンちゃんが大切にしてた・・・」

「そうだ。 なんで大切にしてたか知ってるか?」



私は少し考えたが、すぐに首を横に振った。



「じゃあ、俺は母さんに怒られても、父さんに怒られても泣かないだろ?
 なんでだと思う?」



私はまた首を横に振る。



「それはな・・・コイツがついてたからなんだ!
 コイツをポケットに入れて、その中でしっかり握ってるだろ?
 そうすっと、その手にコイツがパワーをくれるんだよ♪ 
 だから俺は泣かない。」

「ケンちゃんのウソつき!」

「なんでウソなんかつくんだよ? ホントだぞ!」

「ホント・・・??」

「うん、ホント!だからコイツは泣き虫のお前にやる!
 きっとお前にもものすっごくいっぱいのパワーをくれるから、
 ポケットの中でしっかり握ってろ♪」

「うん♪」

「じゃ、帰るか?」

「うん♪ケンちゃん、おんぶ!!」

「えぇ??・・ったく、しょうがねぇなあ。
 ほら、しっかり掴まっとけよ!」








その瞬間、私は誰かに揺り動かされたような気がして、目が覚めた。
でも廻りを見渡しても誰もいない。
上を見上げると、さっきまで見えなかった月が出ていた。



「キレイ・・・」



ふと、体を起こそうとした時、
・・・ううん、違う。
一度だけ見た・・・ケンちゃんの涙・・・。




あれも確かここだった。
私達の両親が、突然の交通事故で亡くなって、
お通夜、お葬式・・・忙しく目まぐるしい日々が過ぎていって・・・



あれ?? いつだっけ?
あ・・・そうだ、あれは49日の法要が終わって、
お墓の中にお父さんとお母さんのお骨を収めた日だった。
お墓から帰って来ると、ケンちゃんが突然いなくなった。
旭や、他の親戚のおじさんやおばさんも気付かなかったけど、
私だけはいつもケンちゃんにくっついてたから、
どこに行ったのか不安になって、真っすぐここを探しに来たのだった。
もう日も暮れて、他の家からは夕飯のいい匂いが漂う時間、
ケンちゃんはここにいた。



「あ!!ケンちゃんだ!」



声をかけようと近づいて、慌てて足を止める。





ケンちゃんが泣いてる・・・!!





ケンちゃんは声を殺して、小さな肩を震わせて泣いていた。



私にとってケンちゃんは、とっても頼れる優しいお兄ちゃんだった。
近所のいじめっ子が、泣き虫な私をいじめると、
必ず血相を変えて助けにきてくれた。
その度、ケンカしてお母さんに怒られるのだけれど、
一度も私を責めたことはない。
私が泣くと、いつも必ず「俺がなんとかしてやるから・・・泣くな」
と言って、ヨレヨレのハンカチで涙を拭いてくれたっけ。
でも私は一度もケンちゃんの涙を見たことはなかった。





今、そのケンちゃんが泣いてる・・・。





私はどうしていいのかわからなくて、しばらくの間、立ちすくんでいたのだが、
ポケットに入れた仮面ライダーのキーホルダーを思い出し、
それを取り出すとケンちゃんに近づいていった。



「ケンちゃん・・・これ・・・」



私がケンちゃんに声をかけ、キーホルダーを差し出すと、
ケンちゃんは驚いたような顔でこちらを見ていたのだが、
慌てて頬に流れる涙を袖口で拭き、
ニッコリ微笑んで私の頭を撫でながらこう言った。



「これはお前にやったんだから、お前が持ってろ」



でも私がそんなケンちゃんの笑顔が痛くて、手を引っ込められずにいたら、
今度は私の両頬を軽くつねりながら言ったのだ。



「俺なら大丈夫! もう泣かないから・・・。
 お前がいるからもう泣かないよ♪」



なぜだかわからないけど、ケンちゃんのその言葉を聞くと、
だんだん悲しくなってきて、私の目からは涙が溢れ出していた。
そして、そのウチ、おいおいと声を上げて泣き出していたのだ。
ケンちゃんは最初困った顔をしていたが、
私の手にキーホルダーをしっかり握らせ、
私をおぶって家に帰ってくれた。
家に帰る頃には、私は泣きつかれて眠ってしまっていたのだが・・・。







そうだ・・思い出した。



ケンちゃんは、あれから泣いていない。
私がいたから・・・きっと泣きたくても泣けなかったのだ。





両親が亡くなってから、年の離れた旭が大黒柱となって、
働いて私達を養ってくれた。
そして、小さかった私と仔仔の為に、ケンちゃんが家事をして、育ててくれた。
私と仔仔の誕生日には、旭がささやかなプレゼントを用意してくれ、
ケンちゃんがお祝いの料理とケーキを作ってくれた。
運動会には旭が父母対抗リレーで走ってくれ、
ケンちゃんが美味しいお弁当を作ってくれた。
私達は兄二人がいたから、両親が居なくても寂しくなかった。




こんな大事なこと、今まで忘れていたなんて・・・。




私の目から涙がとめどなく溢れてくる。
やっぱりここは私の泣き場所なのだ。







すると遠くから私を呼ぶ声が近づいてくる。



え??旭?



よく耳を澄ましてみると、旭だけじゃなかった。
仔仔、ヴァネス、そして・・・ケンちゃん。



4人の声は聞こえるけれど、
真っすぐこっちに近づいてくる声は一人だけ・・・。




ケンちゃんだ。




ボロボロになったドアがバーンと大きな音を立てて開く。
そこには汗まみれのケンちゃんが、息を弾ませて立っていた。



「ケンちゃん・・・」



私は涙で濡れたままの顔で、ケンちゃんの腕の中に飛び込んだ。



「ケンちゃん!!」



ケンちゃんはホッとひとつため息をつくと、
私の頭を優しく撫でながら、ボソッと言った。



「バカか、お前は・・・」












もう既に真っ暗になった夜道を5人で歩く。



「もう! 姉ちゃんのせいで、晩飯食い損なったじゃねぇか!」



仔仔が口を尖らせて不満をぶつける。



「ゴメン。」

「まぁ、いいじゃないか、ちゃんと見つかったんだし・・♪」



旭は相変わらず、呑気な口調で仔仔に言った。



「ホントにいつまでたってもガキなんだから!!」



ケンちゃんが私の横で、私を見下ろしながら眉間にシワを寄せる。



「だから、ゴメンってば・・・」

「知るか!!」



ケンちゃんは歩調を速めて先に行ってしまった。
その後姿を見ながら、ヴァネスと二人で歩く。



「ホントにお兄さん達に可愛がられて大切に育てられてきたんだな?」

「うん♪」

「どうりでワガママ姫なワケだ」

「フフ♪」

「なんだか少し妬けたよ・・・」

「え?? 何か言った??」

「ううん、何でもない」

「こんなに大切に育てられたんだから、俺も大切にしなきゃな?
 お前を泣かせたら、俺はこの世に生きてらなくなりそうだ!」



ヴァネスの台詞にビックリして彼を見上げていたら、
おかしくなって、二人で笑った。
彼が私の頭を抱えるように引き寄せて、身を屈めて耳元で囁く。



「お兄さんが大切にしてきた以上に、これからは俺がお前を大切にするよ。
 絶対に泣かさない♪」



嬉しくって涙が出そうになった。
ポケットに入っていたキーホルダーを握り締め、涙を抑える。





遠くに見えるケンちゃんの背中が、なんだかとても懐かしく思えて、
私はヴァネスの腕をすり抜け、
ケンちゃんの背中目がけ、走っていった。
そして飛びついて言った。



「ケンちゃん、おんぶ!!」



ケンちゃんは、自分の首に巻きついた私の腕と、
今の台詞のせいで、思いっきりムセた。



「ゴホッゴホ!!なんなんだ、お前は?? 急に何を言い出すんだよ!」



顔が真っ赤になっているのが、夜道でもわかる。



「だってぇ、昔はよくおぶってくれたじゃない?!」



ケンちゃんは少し照れくさそうに、眉間にはシワを寄せて、
口の端を緩ませながら、私を見ている。



「いつまでも子供じゃないんだろ?! もうお前の子守は卒業だ!
 今度からはあのダンサーにおぶってもらえ!!」



そういうと、足早に一人でサッサと歩いて行ってしまった。
あっけにとられていると、旭と仔仔がピースサインを私に向けながら、
ケンちゃんの後を追っていく。



ヴァネスが私の肩を抱き、ケンちゃんの後姿を見ながら言う。



「確かにバトン、受け取りました♪」



空を見上げると、さっきの月が頭の真上で輝いていた。






お兄ちゃん、ありがとう。
       私、絶対幸せになるからね♪

                           

                                     ~END~




スポンサーサイト






この記事に対するコメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する







CALENDER
08 ⇔ 2017/09 ⇔ 10
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
プロフィール

Y&Y

Author:Y&Y
FC2ブログへようこそ!

カテゴリー
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
FC2カウンター
フリーエリア
現在の閲覧者数: