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『魔法の言葉』

...2009/05/17 23:55...





両側を飛ぶように流れていく灯り。
窓から吹き込む少し湿った風。
私の前に点々と並ぶ紅いランプ。



私はただボォ~っとそのランプを眺めている。
でもその瞳の奥には何も映っていなかった。










どうして? どうして?? どうして???





頭の中に浮かぶ無数の疑問符。
それを寄せ集めれば、怒りやもどかしさに変わるだけ。



どうして私は素直になれないの?
どうして人の優しさに応えられないの?
どうしてみんなはこんな私に優しいの?



込み上げてくる自己嫌悪の波に飲み込まれ、
私は今にも息ができなくなりそうだ。



ボンヤリと滲んでいく街の灯りの中に、
小さな自分が消えてしまいそうな恐怖を感じ、
ハンドルを握る手に力が入る。
重い気持ちを振り切るようにアクセルを踏み込み、
窓の外を走る風景も加速していた。



頬を伝う涙。
鼻の奥がツゥーンとなって、違う世界に迷い込んだような気にさえなる。
ちょうど水の中に沈んだ時のような・・・・。



夜の幹線道路を、私は現実から追われるように走り続けた。












真っ暗な海の向こう。
小さく街の灯りが見える。



私は車を走らせ辿り着いた先の海辺に車を止め、潮風に吹かれていた。



チャプチャプと防波堤に打ち寄せる波の音が溜め息を誘う。
街灯もなく、月の灯りが辺りをほんのりと照らしているだけ。
そんな中にいると、世界中に私一人だけしかいないような錯覚を起こした。



今は誰といても気持ちは晴れない。
逆にどんどん自分が嫌いになるだけだ。
こんな日は一人でいい。
こんな時は一人ぼっちがいい。
醜い自分を見なくてすむから・・・・・。






「はい。」





私一人だと思っていた空間で声を掛けられ、
飛び上がるほど驚く。



「えっ?!」



ふと横を見ると、見上げるほど背の高い男が立っていた。
私の横で同じように海を眺めていたが、
その手は私に向かってハンカチを差し出している。



「なんですかっ?!」



私が大きな声で叫ぶと、その男は私に視線を移した。



「ん? ほら。」



そう言って、笑顔と一緒に再び差し出されたハンカチ。



「・・・・・結構です。」



私はまた胸の奥から苦い思いが込み上げてくるのを感じて、
海の向こうに視線を投げる。



するとその男は何も言わずに私の手を取り、ハンカチを握らせた。



「結構ですって言ってるでしょ!!」



私の肩が、得体のしれない怒りでワナワナと震えだす。
そんな私の瞳に映る男の優しい微笑み。



「こういう時は『ありがとう』って言うんだよ。」

「えっ??」



私は今、一体誰と話しているんだろう?
私の目の前に見える静かで優しい瞳。
いつかどこかで見たことがあるような気がする。



込み上げていた怒りも、
一瞬どこかに消え失せてしまうような深い眼差し・・・。



「人に何かしてもらったら、『ありがとう』って言うんだ。
 学校で習わなかった?」



男がニッコリと微笑み、そしてまた海を眺める。
私は呆気にとられてその端正な横顔を眺めていたが、
この奇妙な状態が、今、現実に自分の置かれてる状態と重なり、
また胸が苦しくなった。



「・・・・いらないって言ってるのよ!
 もう私のことは放っておいて!!」



私はその男の手を取り、私の手の中でクシャクシャになったハンカチを突き返す。
すると、頭の上でククっと小さな笑い声が聞こえた。



「素直じゃないな~w」



見上げると男がおかしそうに私を見つめている。






そう、私は素直になれない。
それを痛感しているからこそ、ココに来たのだ。
だからと言って、なんでココに来てまで、
こんな見ず知らずの男にそこまで言われなきゃいけないんだろう。
私は目の前でニヤついているこの男に対して、
体が熱くなるほどの怒りが込み上げてきた。






「そうよ!! 私は素直じゃない。
 『ありがとう』って言えるくらい素直だったら、
 こんなに悩んだりしないわ!!」



苛立ちのあまり、つい本音が口をついてしまう。
ふとそんな自分に気付き、恥ずかしくなって俯いた私。



「違うよ。」

「・・・・・?!」



見上げると、また暖かい男の眼差しが私を見下ろす。



「それは違う。」

「・・・・・何が違うの?!」



私は男の言わんとすることがわからず、思わず聞き返す。






「素直じゃないから『ありがとう』って言えないんじゃない。
 人は『ありがとう』って言うから素直になれるんだ。」






私は男の言葉にハッとした。






ここしばらく、何事もうまくいかない。
仕事も私生活も前に進まない。
良かれと思ってしたことが、全て裏目に出てしまう。
気持ちの空回りに焦る私。
いつしかどんどん心が荒んでいって、周りが見えなくなっていた。



でもそんな私に周りの人たちは優しかった。
黙り込み塞ぐ私に暖かい言葉をかけてくれる人たち。
ある人は「大丈夫よ」と言い、
ある人は「いつまでそんな事してんの!」と叱咤激励。
どれもこれもみんな、私への思いやりに溢れていた。



心が弱っている時、人間はそんな人の情に敏感になる。
心の表面についた小さな小さな無数の傷にゆっくりと沁み込んでいく彼らの思い。
けれどそんな時ほど、ささくれ立った心はどんどん捻れていき、
彼らのそんな優しさにわざと背を向ける。



同情なんかいらない。
一人にしておいてよ。
私のことなんか放っておいて!!



時には優しさを両手一杯差し出してくれた人に八つ当たり。
そんな自分が嫌になって、どんどん自分の殻に閉じこもり、
そして更に自己嫌悪の海に潜っていく。



最低だ・・・・・。



私は一言でも『ありがとう』って言えてただろうか?
ちゃんと彼らの目を見て、『ありがとう』と言えていただろうか・・・??



「ほら。」



込み上げてくる涙でぼやけた視界に、再度差し出されたハンカチ。
私はゆっくりとそれを手に取り、小さな声で呟く。



「ありがとう・・・。」



自分でも驚くほど素直に出た言葉。
そんな私の頭をそっと撫でる大きな手。
私はその手から何か暖かいものが注ぎ込まれたような気がした。



「よくできました♪」







しばらくの間、無言で月の浮かぶ静かな海を眺める二人。



「・・・・・どうして?」

「何が?」

「どうしてこんな私に優しくしてくれるの?
 見ず知らずなのに・・・。」



涙が零れ落ちる瞳を上に上げると、男は少し照れたような顔をして答えた。



「信号待ちでキミの車の横に止まった時、
 キミの涙が見えてね。
 その涙がとってもキレイだったからw」



私は頬が熱くなるのを感じる。



「く・・・車っ?! 
 ひょっとして、つけてきたの??」



照れ臭さのあまり、少し責めるような口調でそう言ってしまった私。
でも男はそんな私の様子に動じる様子もなく、事も無げに言った。



「ううん。 つけてきたんじゃない。
 追いかけてきたんだw」



そう言っておかしそうに笑うと、くるりと踵を返し、
少し後ろに止めてある車に向かって歩き出す。



「ど・・・どこに行くの?」



咄嗟について出た言葉。
その声に振り返った男は、変わらない笑顔でこう言う。



「キミももう大丈夫そうだから・・・。
 僕の役目は終わったw」



そしてまた私に背を向けると、足を進める男。
そんな後ろ姿を眺めていたが、ふと手の中に握り締めていたものに気付く。



「あのっ!! コレ!!」



私は涙に濡れたハンカチを上に掲げる。
また私に視線を戻した彼。



「縁があればいつかまた会える。
 その時までキミが持ってて。」



振り向かず、去って行く大きな背中。
大きく手を振り、



「忘れないでね、魔法の言葉!」



そう言いながら・・・・・。









海からの帰り道。
両側を飛ぶようにして流れていく灯り。
窓から吹き込む少し湿った風。
私の前に点々と並ぶ紅いランプ。



何も変わっていなかった。
けれど・・・・・
それが心地よく感じるのは、このハンカチのせい?



私は助手席に置いておいたハンカチを手に取り、口元に運んだ。
少し甘酸っぱい初夏の香り。
あの時の彼の笑顔を思い出させる。



「変な人・・・・w」



私は微笑みながら、信号待ちの幹線道路で、
そのハンカチをルームミラーにくくりつけた。



窓からの風がそれを揺らすと、私の中に広がる幸せな気持ち。
知らず知らずに笑みが零れ、ふと呟く。



「ありがとう。」



窓の外は光の河。
私はその流れに乗って、穏やかな気持ちで家路に着いた。





                                   ~ END ~








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